超訳 小説日米戦争

著者 :
  • ケイアンドケイプレス (2013年9月26日発売)
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感想 : 8
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戦前に流行した仮想戦記のうちの一冊を紹介している。戦前の仮想戦記のほとんどが対米戦だと聞いたことがる。ゆえに太平洋上での艦隊決戦にて趨勢が決まる話が多かったらしい。取り上げられた「日米戦争未来記」の戦争経過も同じような足跡を辿って戦いが繰り広げられる。実際の日本海軍はアメリカを仮想敵とし、太平洋上で日本に向かう米艦隊を迎え撃つことを前提として平時を過ごしていたため、この「未来記」が当時としては決して荒唐無稽ではなかったことが想像できる。
原文の後書きに、「著者がこの日米戦争未来記において暗示したところのものが、果たして何であるかは、賢明なる読者の感解力にまかす」とある。当時における暗示とは何だろうか。それは一番は、日米戦わば日本の敗戦を避け得ずということだと思った。そんな都合良く在野から秘密兵器が誕生し日本が救われることがあるのだろうか。それこそ漫画の類の話である。日本が国際社会の中で舵取りを誤らないためにどうしたらいいのだろうか。原作者は国際連盟の平和構築能力や、徒に対米戦争熱を煽る思想から一定の距離を取ろうとしている。佐藤氏は現代への暗示として反知性主義や反米主義への警告と捉えているが、このことが佐藤氏の言う自らの考えとの親和性の高さなのだろう。

日米必戦論に石原莞爾の「最終戦争論」があるが、大正期に多く出版されたこのような仮想戦記を独自の思想からさらに大きく発展させたものであることが分かる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年6月25日
読了日 : 2014年6月25日
本棚登録日 : 2014年6月9日

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