電通とリクルート (新潮新書 398)

著者 :
  • 新潮社 (2010年12月1日発売)
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本棚登録 : 655
感想 : 102
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ブックオフにて105円で入手。しかし値段に反して面白かったです。

「電通が日本を動かしている」
「結局は電通だよ(諦」
みたいなことを臆面無く言う人がわりといる気がする一方、
広告業界のビジネスがよくわかってませんでした。
そのへんのことが書いてあるのかなと思い、書名に惹かれて購入。

結果としてはそのへんのことはよくわからなかったのですが(笑、
楽しく読めました。
これは情報産業を通じて、戦後日本の人々の価値観の変遷を分析した本です。

分析の視点もさることながら、さすが元広告業界の著者と言うべきか、
比喩の面白さというか、一つ一つの言葉のインパクトが印象に残ります。
特に美しく、かつ、本書の要旨がうまくまとまったくだりがあるので引用。

「自由な消費が始まろうとした頃、人々はマス・メディアという大きな船に乗った。そして、豊漁の後の嵐を経た頃に、小さな船が登場した。人々は徐々に、船を乗り換えた。そして、自ら情報の海を航海しようと試みた。
それがインターネットの時代である。
ところが、小さな船ほど潮の影響を受けやすい。気がつくと、小さな船は同じようなところに集まって、大きな船もまた近くにいる。いろいろな大きさの船が離散を繰り返しながら、結局は大きな潮に乗っている。」

前半は、高度成長期を背景にモノが社会に溢れる中、
人々は「買うためのストーリー」を提供してくれる発散型広告にのっかったということ。
しかしこうしたマス広告につきまとう誇大性(本書では「偽リアリティ」)に食傷気味となった大衆は、次第に自分の生き方を志向し始める。
大衆はマスではとらえきれず、分衆化、セグメント化していく。

この傾向に対応する存在としてインターネットが出現。
インターネットにより自分が情報を取捨選択できることで、情報の主導権が企業から人々の手に移ったかと思われた。
しかし、口コミサイトのレビューが、自分の体験を述べるというよりも「事前の期待値との答えあわせ」をしていることにも見られるように、
まだまだ外からの情報を求める人々がいる。
できる限り損をしないように、「情報との合一性に」による安堵を見いだしている。

しかし時代としては、広告は大きな変化の中にある。


という感じでした。
ちょっと乱暴な要約ですが。。。

広告について初心者すぎて、だいたいの記述を「なるほどなー」と素直に受け入れてしまいました。
これを読む事で何かすぐに役立つものがあるということはわかりませんが、小説に似た読み応えはあるかなと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2013年9月19日
読了日 : 2013年9月19日
本棚登録日 : 2013年9月11日

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