ゴーマニズム宣言SPECIAL 脱原発論

  • 小学館 (2012年8月22日発売)
4.01
  • (47)
  • (56)
  • (30)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 449
感想 : 62

俺が小学6年の時、アメリカとイラクの間で湾岸戦争が勃発した。当時俺は福岡県久留米市に住んでいた。担任の先生は、戦争が始まった翌日、生徒に平和の大切さを訴えた。「なんで人と人とが殺し合わなイカンとね、こんなバカな事があってよかとね」「ニュースで世論調査見てたら、半分の人が『この戦争は仕方がないと思う』って、世の中だんだんおかしくなってきとるんじゃなかとね。みんなは、どう思う?」、で、先生の話は熱くなり、自衛隊批判となった。 「『自衛隊なんかいらない。』そんな意見の人、世の中にはいっぱいいるとよ」、「なんで税金で人殺しの道具を買わないかんとね」。俺の父親は、当時、現役バリバリの自衛官(定年まで勤めた)だったし、校区に自衛隊官舎があったのでクラスには、俺以外にも4〜5名、親が自衛官の生徒がいた。親が自衛官の生徒同士、「あれ?なんか困った事になっちゃったぞ」とキョトンとした感じで顔を見合わせた。で、休み時間となり、先生が去ると親が自衛官の生徒は男子女子関係なく結集、「なんで
あげんこと言われないかんのね」と先生の悪口を言いあった。
その小学校は、日教組の教員が多く、職員室には「激サイテイング社会党」と書かれたポスターやピースボートのポスターが貼ってあったり、卒業式で「君が代」を歌う歌わんで教師が揉めたり、社会の歴史の授業では豊臣秀吉、徳川家康といった権力者の悪い部分ばかりが教えられ、被差別部落の人々の暮らしぶりや水平社の変遷などに大量の時間が割かれ、おかげで明治維新に到達したのが3学期に入ってからという有り様。と、まあ、偏った学校だった。その反動もあったのだろう、俺は政治に関しては、人権派サヨクが大嫌いな保守的な考えの持ち主になってしまった。
しかし、保守とは何かと不便である。飲み会とかでちょっと保守的な事を語れば、きな臭い人と思われる。今回の選挙前にフェイスブックやツイッターで、政治的な発言のリツィートを多々目にしたが、ほとんどがリベラル系のなんだかさわやかな発言。ちょっとうらやましかった。俺が政治的な発言のツィートや共感した政治家の言葉などをリツィートしたら、おそらくドン退き間違いなしだからである。まあ、いいや。

そんな頭がカチコチの保守派である俺は、原発反対運動に対しても、「どうせ、学生運動崩れの左翼がやってんだろ」と、冷ややかな目で見ていた。が、東日本大震災があってから、遅すぎなんだが、原発の存在にやっとこさ疑問が生じてきたのである。

何か原発の本を読もうにも、どの本も難しそうだし・・・で、今年の夏に刊行された小林よしのりの「脱原発論」をやっとこさ手に取った。

正直、今の俺にとっては、小林よしのりは微妙な感じだった。「戦争論2」は、ドシンとキたが、以降、小林よしのりは反米色を強め、「気持ちはわかるが・・・、なんだか現実から離れてないかい?」という存在だった。

ここ数年の小林よしのりの言動は、なんだか変な感じ(保守的な俺が左翼の人の言動に対して覚える、考え方の違いからくる違和感ではなく、主張してた事が短期間で変わってしまう、筋道が通っていない感じ)であった。

そんなフワフワした感じで読んだ本書、が、フワフワは一気に吹っ飛ばされた。単純にオモロい。読ませる。これは原発推進派の人にも読んで欲しいと思った。小林よしのりの意見が正しい、間違っているという観点は、置いといて、読み物としてオモロいか、オモロくないか?そこで読んで欲しいなあ、と。

正しい、正しくないかは置いといてと書いたが、本書を読むと、原発反対派を冷ややかに見ていた俺でも、かなり頷ける事が多々あった。シーベルトの基準のムチャクチャさ、ホルミシス説(低線量被爆は身体に良いとする説)の根拠のなさ、核燃料サイクル計画の破綻、あまりにムチャクチャである。

ちょっと大目に見て、原発を試験的にやるのはいいとしよう、あくまで試験的に小規模だったら。が、何故にこんなにも未知の領域が多い放射能を利用した発電システムをこんなにも増やしてしまったのだ?見切り発車でしかない。

と、憤りを覚えてしまった。この本、読んで良かった。色々知れた。

が、一方で原発推進派の本もまた、読もうとも思う。素人の俺には、わからん事が多々あるが、両方の言い分を知りたい。けど、今の俺には、原発に嫌悪感を覚えている。(冒頭、日教組の先生をけなしましたが、人柄は悪い先生ではありませんでした。主義を憎んで、人を憎まずでありたいと思っています)。

人気ブログランキングへ←よかったら、クリックして下さい。お願いします。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年4月26日
本棚登録日 : 2013年4月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする