生き地獄天国: 雨宮処凛自伝 (ちくま文庫 あ 41-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (2007年12月10日発売)
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本棚登録 : 204
感想 : 26

俺にとって、雨宮処凛とは、もどかしい存在である。はっきり言って言論人としては、支持できない。朝日新聞に「プレカリアートのマリア」と呼ばれ、社民党の福島みずほと懇意にし、「週刊金曜日」の編集委員を務める(どれもこれも俺が大嫌いなメディア)。俺がたまに読むウェブマガジン「マガジン9」の連載も、「甘ったれた事ばかり言ってんじゃねぇよ」と、歯がゆい気持ちにさせられる。俺は保守的な人間であるが、なるべくはリベラルな言論にも、一理を見出だしたい。が、雨宮処凛のそういった言論に一理を見出だした事はない。

が、その一方で、勝手な親しみを抱いている。俺と年が3つしか離れていない為、趣味が被っているのだ。雨宮のゴスロリの格好、俺は中高生時分はバリバリにビジュアル系大好き人間だった為ちょっと嬉しかったり(この本の中にもZi:killの歌詞が引用されていてニンマリしてしまった)、いじめ体験、小林よしのりに影響されていたり、「戦後民主主義」に対して違和感を抱いていたりというのは共通してるし、また俺が唯一全著作を読んでいる作家見沢知廉の弟子だったり、一緒にサブカル話をしたら(そんな機会は一生ないだろうが)、盛り上がるんではなかろうか、と妄想してしまう。そもそも俺が雨宮を知ったのは、大槻ケンヂのエッセイであるし。
と、言論人としては嫌いであるが、気になって仕方ない人間なのだ。で、この自伝を読んでみた。

正直、う〜んとなってしまう部分も多々あったし、努力が至らなかった部分を社会のせいにしてる様に感じる箇所も多々あった。けど、自分を正直にさらけ出している様は感服した。

壮絶ないじめ体験を書く一方で、近所の犬を虐待したり、子供を誘拐しようとした事、母親にかなり強力な暴力をふるった事、ビジュアル系バンドの追っかけをしていた時の性生活の乱れっぷりを正直に書いている。読んでいて、眉をしかめてしまうが、いじめの被害者、悲劇のヒロインとしてだけではなく自分の悪い部分、普通の人なら隠してしまいたい過去を正直にさらけ出す姿勢には好感を覚えた。

また、右翼団体に入ったり、元オウム信者と交流したり、北朝鮮に行ったり、雨宮が組んでいた愛国パンクバンド維新赤誠塾のライブをイラクでやったり、と、行動として支持できないが、思い込んだら実行してしまうエネルギー、右、左関係なくまっしぐらに現場に突っ込んでいく姿勢は、凄いとしか言い様がない。

けど、この自伝を読んだ事により、俺にとっての雨宮処凛の認識が変わったかと言うと、そうでもなかったりする。

今後の雨宮処凛はどんな活動を行うんだろうか?俺は多分、雨宮の言論を好きになる事はないが、同世代の人間としてちょろっとは応援したい。

俺としては、雨宮に適度に冷めた目線を持って、良き左翼の翻訳者になって欲しい。あと、見沢知廉の回顧録とか評伝を書いて欲しいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 回顧録
感想投稿日 : 2014年1月27日
読了日 : 2014年1月27日
本棚登録日 : 2014年1月27日

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