おこだでませんように

  • 小学館 (2008年6月27日発売)
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感想 : 353
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 経験談だが、1歳になるかどうかのわが子に風邪薬を飲ませようとした時のこと。「お口、あーん」と言った私に、これ以上ないくらいの大きな口をあけて、私をまっすぐに見つめてきた娘の顔を思い出す。ふと、これが毒であっても、この子はこうして口をあけるのだろうな、と思った。子どもは、親(大人)の言うことを全力で受け止めて、微塵の疑いも持たず、全力で信頼を寄せてくるのだ。この子にいい加減なことはできない!と、愛しさと親の責任を強く感じた瞬間だった。
 この本の主人公の男の子は、とても素直な子で、親や先生の言うことをそれこそ全力で受け止めている。親や先生に喜んでもらいたい、ほめてもらいたいのだ。しかし、結果だけを見れば、言いつけ通りではないことばかり。この子の、大人への素直な信頼やメッセージを、周囲の大人たちは結果に気を取られて、きちんと受け取れていない。この子の上手くいかなさ感と、この子自身の気落ちしている感が切ない。
 この子の思いに気付いた時の大人たちの涙は、反省でもあろうが、この子の素直さやあるがままの存在を守っていこうという決意のようなものにも思え、私の読後感は厚みのあるものとなった。
 人は単純ではない。丁寧に接していきたいものだとつくづく思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年5月13日
読了日 : 2017年3月2日
本棚登録日 : 2017年3月2日

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