日本文学100年の名作 第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)
- 新潮社 (2015年5月28日発売)
小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』A
これは卑猥。植字がシームレスに性交へと移行する。素晴らしい。
桐野夏生『アンボス・ムンドス』B+
教え子女子たちの結託。JSの空恐ろしさ。
吉田修一『風来温泉』B
妻を置いて旅へ。そこで女と会い、思い出すのは……。
割りとありふれた小説だなーと思った。
伊集院静『朝顔』C
どうにもこの作者には嫌悪を感じてしまう。それを覆せず。
恩田陸『かたつむり注意報』B+
幻想譚。
三浦しをん『冬の一等星』A
二十分ほどのロードムービーを見て素敵なシガレットを味わったかのような。
語り手の現在も、少女の頃も、誤って少女を誘拐してしまった男も、みなよい。
角田光代『くまちゃん』A-
ヨユーの表情でセクースしまくる大学生を描写する小説ほど唾棄すべきものはない。
が、本作はそれをぎりぎりのところで回避して、「ヨユーじゃない」という点を浮き彫りにしている。
森見登美彦『宵山姉妹』B
らしい、幻想譚。
木内昇『てのひら』C
好きな漫画に似た話がある(自分が大人になってお母さんが完璧じゃないと知る)が、どうもせせこましい。
道尾秀介『春の蝶』B
結局は親子の情を感じさせるいいお話に着地させれば読者は安心するんだろ、それを作者も狙ってるんだろ、と若干意地悪に読んでしまった。
まあまあ。
桜木紫乃『海へ』A-
この女は、悲観も楽観もしすぎることなく、諦めも希望もなく、少しどちらかに揺れてはすぐに大きな軸に戻る。
これは「ただ単に生きている人」と言ってもいい。
高樹のぶ子『トモスイ』B+
どうしても川上弘美を思い出さずにはいられない幻想譚。
トモスイを間にしてわたしとユヒラさんがひとつになる。
山白朝子『〆』B+
すてきなすてきなグロテスクなイメージ。
辻内深月『仁志野町の泥棒』B
語り手はいわば渦中の観察者。立場設定が巧み。だが小ぢんまり。
伊坂幸太郎『ルックスライク』B
いつもの伊坂。
絲川秋子『神と増田喜十郎』A
いやーこれは脱帽。
わかるわからないだけなく、凄いことがわかる。
神。増田。なんでもない他人に神を感じてしまう瞬間。
★★★
1巻から10巻まで、A以上に採点した作品をまとめてみた。
好きな作家単位ではなく好きな作品単位。
限りなくAに近いBもあったが、読了後の採点は変えずA以上で。
1
佐藤春夫「指紋」
谷崎潤一郎「小さな王国」
芥川龍之介「妙な話」
内田百閒「件」
宇野浩二「夢見る部屋」
稲垣足穂「黄漠奇聞」
江戸川乱歩「二銭銅貨」
2
中勘助『島守』
梶井基次郎『Kの昇天』
夢野久作『瓶詰地獄』S
水上瀧太郎『遺産』
龍胆寺雄『機関車に巣喰う』
尾崎翠『地下室アントンの一夜』
堀辰雄『麦藁帽子』
大佛次郎『詩人』
3
萩原朔太郎『猫町』
石川淳『マルスの歌』
中山義秀『厚物咲』
岡本かの子『鮨』
中島敦『夫婦』
4
豊島与志雄『沼のほとり』
坂口安吾『白痴』
島尾敏雄『島の果て』
小山清『落穂拾い』
室生犀星『生涯の垣根』
5
吉行淳之介『寝台の舟』
井上靖『補陀落渡海記』
河野多惠子『幼児狩り』
山川方夫『待っている女』
6
川端康成『片腕』
野坂昭如『ベトナム姐ちゃん』
小松左京『くだんのはは』
古山高麗雄『蟻の自由』
野呂邦暢『鳥たちの河口』
7
筒井康隆『五郎八航空』
安部公房『公然の秘密』
富田多恵子『動物の葬禮』
田中小実昌『ポロポロ』
井上ひさし『唐来参和』
色川武大『善人ハム』
8
深沢七郎『極楽まくらおとし図』
佐藤泰志『美しい夏』
尾辻克彦『出口』
山田詠美『ひよこの眼』
大城立裕『夏草』
9
辻原登『潮山再訪』
川上弘美『さやさや』
村上春樹『アイロンのある風景』
10
小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』
三浦しをん『冬の一等星』
角田光代『くまちゃん』
桜木紫乃『海へ』
絲川秋子『神と増田喜十郎』
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- 感想投稿日 : 2015年7月1日
- 読了日 : 2015年7月1日
- 本棚登録日 : 2015年6月4日
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