アラベスク (1) 第1部上 (白泉社文庫)

著者 :
  • 白泉社 (1994年12月1日発売)
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感想 : 68
5

「天人唐草」「ところてん」などなど、綺羅星のような情念にまつわる漫画をたくさん創ってくれた作家の、
しかしバレエ物語だけはどうしても手を出せずにいた。
特に名作誉れ高い「アラベスク」なのに、どうしても。
クラシックバレエに大きな興味がなかったせいもあるが、純粋に絵柄の問題でもあった。
よい意味で独特な絵柄の作家なので、いかにも少女漫画然とした本作の絵柄に抵抗があったのだ。
以上、言い訳。
ひたすら後悔するばかりである。

第1部は王道サクセスストーリー。
ノンナの役柄は「追う者」である。
第2部、ノンナは「追われる者」になる。
ここからが抜群に面白い。
田舎娘のヴェータに追われ、嫉妬に狂う。
さらにミロノフをライバル視するエーディク、このふたりが狂言回しになる。
エーディクは……いい奴だなぁ……。
(性格としても造詣としても、ミロノフより断然エーディクが好き。
 というより、ミロノフは、辛気臭さを突き抜けてギャグにすら見える。)
さらに極めつけは、カリンという女性。
これほどの物を創れる作家は、多くはいない。
誰かが誰かを見つめている視線を誰かが追っている、というような構図が素晴らしい。
そして、カーテンのそよぐ……。
あぁ。
私の辞書の「アラベスク」という項目に、またも美しい物語が加わった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2016年7月14日
読了日 : 2016年7月14日
本棚登録日 : 2016年7月14日

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