BSにて。実は前知識なく録画して、へーボウイの息子なんだ、とか、結構評判いいんだ、とか舐めてかかって鑑賞して、よかった。
まずは97分というコンパクトさ。
あまり尺の長短を気にしない人間だが、作品の内容と尺とサイズが綺麗に落とし込まれた尺というのは、もはや美学だと、改めて知った。
新しい!とか、筋に驚愕!とか、どんでん返し!とかは決してない。
しかし細かいところまで目が行き届いている、ウェルメイドな作品。
比較的早いうちに、クローン、AI、というネタばらしがあるのも、中編から短編小説という映画にぴったりな長さの題材が、逆算できる。
また、オマージュ先や連想先が多数容易に浮かぶのも、映画的記憶を活用した中規模SF作品という、大変良質なもの。
・ガーティ……「2001年宇宙の旅」のHAL。
そこまでの奥行=哲学的「吹かし」はないが。
AIが正常に動作を続けるために、ご主人である人間を(特に仕事はないのに)配置し続ける必要がある、という、倒錯した関係性がある、らしい。
これなんかはAIが人間を超越するというわかりやすい構図を超越して(むしろキューブリックやクラークには読めなかった)予言的な題材なのかもしれない。
・「エイリアン」のローテクな船内設備やらディスプレイやら。
・「惑星ソラリス」のローテクとか、不穏な雰囲気とか。得体の知れない存在が船内に出没するという、ホラー。
・「ガタカ」の静謐さ。
・3年という寿命については、もちろん「ブレードランナー」を連想するが、さらに2015年のテレビアニメ「プラスティック・メモリーズ」をも。
さらに日本人として連想せざるを得ないのが、まるで藤子・F・不二雄だな、と。
具体的にどのSF短編のどの部分と言えないので浅い読者なのだが、間違いなくF先生が描いていた。
……ということは、F先生がさらに参照していたSF小説や映画やが存在するということで、新規さよりも目配せという、よさが、再度浮かび上がってくる。
・そもそも、ひょんなことで同時に存在してしまったクローンふたりが、互いにクローンと認め合って、意外と友情を育み、相手にクローンを超えた人間性を見たがるという、もうF先生の絵で再現できるのだ。
ラストに言及してしまうが、寿命は3年だと気づいている側は、相手が自分の寿命の長さを知らないという状態で、地球に送り込む……この残酷さと、託した希望の大きさと。ここもF先生の絵で。
・うん。こういうのが好みだな。
さらにいえば、全体的な不気味さについては、SFC「LIVE A LIVE」のSF編の怖さも連想する。
もちろん作り手は知らないものばかりだろうが、勝手に連想を広げることができる、映画というものは面白いものだなあ。
- 感想投稿日 : 2020年2月12日
- 読了日 : 2020年2月12日
- 本棚登録日 : 2020年2月12日
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