ブルックリン 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

監督 : ジョン・クローリー 
出演 : シアーシャ・ローナン  ドーナル・グリーソン  エモリー・コーエン  ジム・ブロードベント  ジュリー・ウォルターズ 
  • 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
3.43
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本棚登録 : 157
感想 : 21
3

個人的な前置き。
シアーシャ大好きおっさんにも係わらず、うっかり当分以前に見たつもりでいた。
が、それは「17歳の肖像」と混同していたのだった。
俺のばかばか。
時代も場所も異なり、少女が都会で成長するくらいしか共通点ないじゃん、と思ったが、実はどちらも脚本家ニック・ホーンビィが関わっているのだった。
テイストとして無関係ではないと判ってホッ。
また、大人になってから好きになって、なるべく出演作を追っているのが、まさにシアーシャ・ローナンとキャリー・マリガンのふたり。
ふたりがこのたび頭の中で並んだとき、あ! シアーシャはSさんに似ていてキャリーはFさんっぽい、と自分が好きになりかけていたふたりを思い出した。
実生活での恋慕を予め抑圧するためにこのふたりの俳優を好きになったのではないか、と。

以上自分語りおじさんの前置き終わり。
以下は連想おじさんの箇条書きへ。

・序盤の田舎からの脱出欲。ここで結婚せよという圧は凄まじかったろう。
・そりゃ大西洋を渡るんだもな~船の船酔いの酷さ。船室のトイレに鍵をかけられて入れずバケツを。吐く前に尻を突っ込むあたり、イイネ! したい。梶尾真治原作・鶴田謙二作画の「おもいでエマノン」を思い出したりして。
・ここで長距離航海のノウハウを教えてくれる、宮崎駿監督「魔女の宅急便」のウルスラっぽい先輩女性の存在が、その場限りなのに印象深く、よい(後半にも効いてくる)。
・さてニューヨークはブルックリンに来たエイリシュが、デパートの売り子をライスワークにするわけだが、この移民や民族やの感覚はアメリカの都市部の感覚なんだろうな。
・トッド・ヘインズ監督「キャロル」でルーニー・マーラが演じたのも、1950年代のブルックリンのデパートの売り子だった。
・エイリシュの下宿の女たちは移民のコミュニティだが、ここの姦しさは勝手に、ルカ・グァダニーノ「サスペリア」(2018)を連想した。
・下宿の長とかデパートの上司とか、このへんで気づいたが……、この映画は(決してあらゆる層に訴える水準の)劇的ではないからこそ、登場する役者の顔力で「もっている」。もちろん調度品や衣装や美術やの丹念さ込みだけども。
・なんでもアイルランドを表す緑の服がシアーシャを彩り続け、アイルランド→アメリカはブルックリンへと移行する過程を示しているんだと。このカラーコーディネートは見ている最中も気づいたし、大事だと思った。緑→赤っぽい印象も。
・ところでイタリア人彼氏の「背の低さ」もまたしっくりくるな、と。エイリシュがスパゲッティを食べる練習とか、細部も文化的に面白い。
・さらにところで、簿記を習うの、というところで、ボキ、と聞こえてびっくり。「bookkeeping」がボキと聞こえるみたい。語源どうこうではなく偶然の一致かしらん。
・サザエさん的髪型。前髪を降ろしておでこを隠すのは男女ともに、世界大戦後の感覚なのだとか。
・姉との手紙でホームシック、姉の死、帰郷、故郷の男とNYの男を比べて、という、「よくある話」へ中盤から雪崩れ込む。この辺、関係は薄いしベクトルも違う高畑勲監督「おもひでぽろぽろ」の田舎の醜悪さを思い出したりもした。都会と田舎は逆転しても「そいつ選んでも今後大変じゃろー(それは相手ゆえではなく自分ゆえ)」というところも。
・全体を通じた感想としては、親からも異性からも職場からも、あらゆるところから「求められる立場」になった女性、という、国や性別だけでなく能力的に私と真反対の立場の人物が主人公で、なかなか想像力が及びきらなかった。「結局よゆーなんでしょ」、と僻み目線もあって。
・田舎と都会でふーらふら、田舎の洗練されたイケメンと都会の生活感ありありの男の間でふーらふら、という構造について、視点人物に高潔さを求めれば眉を顰めるところだが、偶然ちょっと綺麗で偶然ちょっと有能だった女の子の選択と思えば、そのへんにある何でもない話とも思える。が、その何でもなさと、求められ続ける感じが、齟齬を来している、とも感じた。倫理的に許せないから失敗せよと恨むほどではないが、なんだかなーと。
・どっちの男を選べば幸せなのかという基準に、視聴者を誘導する無意識の価値判断への違和も、ある。あっちとくっつけと応援することを促されるような作り。
・まあ眼福だったのは間違いない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋画
感想投稿日 : 2021年8月31日
読了日 : 2021年8月31日
本棚登録日 : 2021年8月31日

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