蜩ノ記

著者 :
  • 祥伝社 (2011年10月26日発売)
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「遠望すれば春霞の山々に桜の花びらが舞い、近くは谷川のせせらぎ、カワセミの飛翔、清浄な山間の風景に礫をもつ少年が姿を現す」美しい冒頭の描写から引き込まれる。藩内の権力争い、7年前の事件解明という推理仕立ての展開で進んでいく。本筋から少し離れたところで起こる、まさか、という事件。哀しさと切なさで胸を打たれる。漢詩が縦横に用いられ、情緒的で美しく作品に独特の香りを与えている。「カナカナカナ」と減衰していく蜩の鳴声が、人の命や世のはかなさというのか、寂寥が心に染み、源吉の笑った顔がいつまでも残る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月8日
読了日 : 2013年10月8日
本棚登録日 : 2019年12月8日

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