▼素晴らしい本です。馬鹿を承知で煎じ詰めると、方言がことばであり、文法とか正誤など些事であり、そこにヒトの愛着と歴史があり、国家なんぞ超えた普遍の価値がある。国家は国家のために言語にマルバツをつけてレッテルを貼るが、それはそれそのように理解せねばあかんぞな、というような。
▼(引用)人の精神には弱いところがあって、何かきちんとした数字が示され、それが教科書などに印刷されると、やっと落ちついた気分になって安心できるというところがある。
▼(引用)言語とは、それを構成するさまざまな諸方言をまとめて、その上に超越的に君臨する一種の超方言とする考え方である。それは頭のなかだけで描き得るきわめて抽象的なものであるから、誰にも話されていない、いわば日本語という名と、それについての観念とだけがある抽象言語とも言えよう。したがって言語とは、多かれ少なかれ頭のなかだけのつくりものである。別の言いかたをすれば、言語は方言を前提とし、また方言においてのみ存在する。それに対して方言は、言語に先立って存在する、よそ行きではない、からだから剝がすことのできない、具体的で土着的なことばである。それが観念のなかのことばではないという意味において、首都で話されている日常のことばは、厳密な言いかたをすれば、極度に観念のなかの標準型に近づけられた首都方言である。
▼スカして言えば、「そうに決まってるやんか」ですが、それをねっとりと情熱プラス実証で語る本書は、時を超えて残したい名著です。しかも平易です。たれでも読めます。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本:お楽しみ
- 感想投稿日 : 2024年1月21日
- 読了日 : 2022年9月17日
- 本棚登録日 : 2022年9月17日
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