日本人は民主主義を捨てたがっているのか? (岩波ブックレット)

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  • 岩波書店 (2013年11月7日発売)
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現在,日本がおかれている民主主義の状況を,その思想・主張が最も顕著であるネット上の言説を用いてわかりやすく解説している。

橋下や安倍を支持する様な者たちのいう事は,彼らの言葉をそのまま九官鳥の様に連呼するだけの“自分”のない主張で,何を指摘されても同じ事を只々繰り返すだけの壊れた蓄音機だが,それに対して批判する者たちも「差別だ」「反民主主義だ」「憲法違反だ」「人権無視だ」「ファシズムだ」「ヒトラーの様だ」と紋切り型の批判しかしない。しかし,彼らにその様な事を言っても「暖簾に腕押し」だ。

“そのためには,まず手始めに,紋切り型ではない,豊かでみずみずしい,新たな言葉を紡いでいかなくてはなりません。守るべき諸価値を,先人の言葉に頼らず,われわれの言葉で編み直していくのです。それは必然的に,「人権」や「民主主義」といった,この国ではしばらく当然視されてきた価値そのものを問い直し,再定義していく作業にもなるでしょう。(P.25)”

にはなるほどと思う,その人にあった,そのコミュニティにあった批判をしなければ,彼らの心には響かないとは日々思っているところである。ただ,人権は普遍的な価値のもので当然であるものなので,そこに変な価値観を付加するのはよくないが。

“民主主義とは本来,自立した個人の存在を前提とします。民衆に主権があるということは,端的には「民衆こそが責任主体であり,決定権がある」ということを意味します。そのためには,民衆の一人ひとりが,少なくとも政治家の仕事の基本的な良し悪しを判別できる程度には,情報を集め,分析し,政策を理解し,選択できる能力を維持していかなければなりません。そして,そのための時間を割かなくてはなりません。民主主義の健全性を維持していくためには,私たち一人ひとりが死ぬまで勉強を続けなくてはなりませんし,絶えず責任の重みを感じ続けなくてはならないのです。それは民主主義の世の中に生きる人間の宿命であり,民主主義から受ける恩恵の代償とも言えます。(P.45)”
耳が痛いが,まさにその通りで,おまかせ民主主義を通り越した,この消費者民主主義では,国民に主権者たる自覚が全くない,そんなのだから安倍に平気で「国家権力を縛るものだという考え方があるが、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的考え方だ。」などと言わせてしまうのだ。自戒もこめて,さらに意識する様にしたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画以外
感想投稿日 : 2014年3月25日
読了日 : 2014年3月25日
本棚登録日 : 2014年3月25日

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