自閉症裁判: レッサーパンダ帽男の「罪と罰」

著者 :
  • 洋泉社 (2005年3月1日発売)
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障碍と裁判。減刑を求めるのでもなければ責任能力の有無を争っているのではない,自閉症の者が自閉症として罪に向き合いそして裁かれる,その難しさ。
大石弁護士の「報告」における“<第四五回公判・論告求刑の予定が延期となった>日本の刑事事件は「疑わしきは被告人の利益に」という原則をあまりにも重んじていないことをあらためて実感しました。検察も裁判所も確実に,単純に,社会防衛,秩序維持,危険排除,変人隔離,を基調としています - P.286 第六章 裁判(七)より”ここはすごい重要なところです。
よく,加害者が重んじられて,被害者は軽んじられている!という声を聞くが,どちらがどうではなく,どちらも重要なのだ。そして,刑が確定すると人権が著しく制約されるのだから,加害者に慎重になるのもこれは当然のことだろう。これを許すと言うことは,いずれ自分が不利益を被りかねないということを表している。
“この判決の意味はなにか。被告を「社会から永久に排除せよ」ということに尽きる。判決をもし社会が支持するのであれば,もう二度と「ノーマライゼーション」などという言葉は口にしないほうがいいと思う。 - P.288 第六章 裁判(七)より”同じく大石弁護士の話したところだ。罪は罪として償うのは当然として,なぜそのような事件が起こったのかを社会は全くフォーカスを当てようとしない,先の危険排除を行って,ではどれくらいの人をどれだけ隔離すればいいというのか,いずれは恐ろしい社会となるだろう。この裁判はそう社会に問いかけたものであったと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画以外
感想投稿日 : 2013年10月24日
読了日 : 2013年10月24日
本棚登録日 : 2013年10月19日

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