アカガミ

著者 :
  • 河出書房新社 (2016年4月9日発売)
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近未来の日本、将来に夢も希望も持てない若者たちの自殺が増え、人口は減少の一途をたどる。そんな危機的状況のなか、政府は「アカガミ」制度を始める。

ぞっとするような話だった。
人との交流を好まず、必要最低限の会話しかしない若者たち。用事はネットで済ませ、家と会社を黙々と往復する毎日で、遊びに出かけることもない。
当然コミュニケーションが苦手になり、恋愛も結婚も、ましてや子どもを持つことも望まない。性欲は禁忌となる…。

政府に選ばれたものだけが、隔離され特別に優遇された環境のなかで出産へと導かれる。その招待状が「アカガミ」だ。
自殺未遂を経験している主人公の女性は、人生に一縷の望みをかけてその世界へ飛び込んでいく。期待と不安、徐々に膨らんでいく幸福感。そしてまさかの急展開が待ち構えている。

恐ろしいのは、この状態が現代の日本社会の延長上にあるかもと思われることだ。
草食系男子の増加が指摘されて久しいが、右肩下がりの経済、高齢化社会と介護の問題、ネットと清潔感があふれ、自分の感情をうまく表現することのできない若者の増加、その果てにある世界は、決して絵空事ではないだろう。

現代社会への警鐘を鳴らす作品として、興味深く読んだ。でも、最後のほうがかなりの駆け足になっている。
おもしろい作品なので、性のあり方を中心としたこの作品を第一部として、さらにその後の二人の戦いと社会を描く第二部をぜひ読みたい。その希望も込めて、星4つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: か行
感想投稿日 : 2016年5月13日
読了日 : 2016年5月13日
本棚登録日 : 2016年5月1日

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