倭国の時代 (ちくま文庫 お 30-3)

著者 :
  • 筑摩書房 (2009年2月10日発売)
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百済・倭の連合軍が唐・新羅連合軍に敗れて日本が建国されるに至るまでの歴史が本書のテーマ。

前半は、魏志倭人伝、日本書紀、古事記などの信頼性について取り上げる。その説得力をつけるために第1章を使って「マレー年代記」まで例にあげており、文献の信頼性を論じる終わるまでの前置きに半分以上のページを割いている。

初代の倭国大王は仁徳天皇であったこと、それ以前のヤマト王権は存在しなかったこと(ただし、巻向遺跡をどうとらえるかの疑問は残る)、邪馬台国は畿内であれば河内だった可能性があること、朝鮮半島からの渡来人である秦人や漢人のルーツや立場など、興味深い内容が多かった。

岡田さんの本は「歴史とはなにか」「世界史の誕生」を読んで、すっかりひいきになったが、この本もとても丁寧に説明されており、読み応えがあった。これほどの力作が1976年に発表されていたことにも驚く。読まない決断をしなくてよかったと、ほっとしているほど。

・「隋書倭国伝」によると、600〜609年の間、倭王の位にあったのはアメ・タラシヒコ・オホキミという男王で、日本書紀による推古天皇と異なる。
・宋書に書かれている「倭の五王」は、履中から雄略の5代ではなく、仁徳以下の天皇。
・日本書紀の第2〜11代天皇の記述は、すべて7世紀の事件をもとに作られた。第12代景行天皇紀の東国の英雄の原型は天武天皇。初代神武天皇の大和平定の物語は、壬申の乱の産物。
・祖先は高千穂の峯に天降ったのは、隼人の同化に努力した天武天皇の政策から生まれた話。
・古事記は、日本書紀や風土記から材料を採って平安初期に書き直したもの。古事記の序を書いた太安麻呂は、新羅系の帰化人と関係が深く、壬申の乱や薬子の乱で失脚し、宮廷音楽を管理するだけの家柄となった多氏の家系。
・古代中国の都市の住民は、外来の狄人が中核となり、狩猟民族特有の氏族組織のもとに共同生活を営んだ。
・BC3世紀に燕国が朝鮮半島に前線基地を設置して、日本列島に向かう貿易ルートを握った。
・「魏志東夷伝」によると、辰韓人は秦の暴政を避けるために亡命してきた中国人の子孫。
・五湖十六国の乱とそれに続く南北朝の時代に中国の勢力が及ばなかった結果、百済、新羅、日本が独立王国として成長した。
・369年の七支刀に刻まれた百済王と倭王との友好関係は、高句麗の南進という脅威を前にして、安全保障条約を結んだことを意味する。
・早くから中国化していた辰韓・弁韓からは古くから華僑が倭国に流れ込み、秦人と呼ばれた。475年に広州が陥落して以降、帯方郡からの移民が日本列島に流れ込み、漢人となった。朝鮮半島からの移民によって平野部が開拓された結果、河内、大和、山城、近江などが秦人や漢人で占められるようになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年1月11日
読了日 : 2014年1月18日
本棚登録日 : 2014年1月11日

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