NHKこころの時代~宗教・人生~ 歎異抄にであう 無宗教からの扉 (NHKシリーズ)

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  • NHK出版 (2022年4月6日発売)
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 「凡夫とは、自我のために欲望を動員し他者のことがあまり見えず、どこまでも自己の優越を主張することに終始する存在です。」自分は凡夫ではないと思っていた私に、この言葉はグサリと刺さりました。
 悪人正機の考えについて、悪人とは単なる善悪ではなく自力で仏となる手立てを持たない人、つまり自己中心を免れない自分自身であると気付かされました。自己実現には自己主張、自己正当化が伴い、自分が悪いという考えを持てないと述べられていました。ここにとても納得し、自己中心的に生き、自己拡大の欲求他者と摩擦して生きる自己を自覚するするとともに、なんとかしなければと思いました。
 しかし、自分では説明しきれないほどの過去からの行為の積み重ねや膨大な因果関係が複雑に絡み合った結果、今の自分が構成されているため、なぜ今の自分がこの状態なのか説明できません。意識すらしません。智慧の獲得とは、その因果関係を全て把握・理解することを目指しますが、それも人間には不可能です。人間は自我を持っているので、こういった因縁果を自分の都合よく解釈します。うまくいっている時は自分の力、うまくいかないと環境や人のせい。まさに自分のことを指摘されているようでした。そういった自己中心的なものの見方を離れ、自分は宿業的存在であると受け入れることで、物事への執着が薄れ、他人にも寛容になれると気づけました。私の罪ではなく、私が罪(自己中心性を免れない存在である)ことを自覚し続けることが必要だと思いました。
 他力について、難しい考え方でまだ十分に理解できていないと思います。五濁に代表されるこの世の不条理を乗り越えるには、自力では限界があります。日常生活で些細な不条理に直面した際でも、心は乱れ、不安や怒りに支配されます。大切な人の死や大規模な災害ならなおさら心は大きく乱れます。自分ではどうにもならない不条理に対して心のゆとりや精神の自由を獲得するために、念仏や阿弥陀仏の救いを拠り所とするのが他力の考え方だと思いました。他力とは生きていく上で抱える自分ではどうしようもない罪の意識や強迫観念、自責の気持ち、悩みから解放され、精神の自由を獲得する考え方なのかなと思いました。二河白道の話にある、阿弥陀仏は川に落ちないようにするのではなく何度川に落ちても救ってくださるという話にある通り、ありありのままの自分で救われるという安心感や温かみを感じられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年1月24日
読了日 : 2023年1月24日
本棚登録日 : 2023年1月24日

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