ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

著者 :
  • 岩波書店 (2008年1月22日発売)
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「アメリカンドリーム」という言葉はアメリカの現状を反映できていない、ひと昔前までの姿であると、この本を読み終わった今、思う。
アメリカでは「競争」=「自由」と考えられており、その価値観の下、教育や医療など「いのち」と関わる産業までもが市場原理の中へと放り込まれてしまった。本著では、そういった人の根幹に関わる産業が民営化された結果生み出した、貧困の格差について緻密にレポートされている。
また、同じく国防という分野も民営化され、戦争は貧困ビジネスの一環として経済を支えることとなる。
国が国民に対して本来背負うべき最低限の責任までも放り投げてしまった時、一度生活から転げ落ちてしまった国民に誰が手を差し伸べるのか。小泉・安倍内閣によって民営化が進められ、今なお、様々な分野にその魔法の言葉が囁かれているこの日本においても、このことは他人事ではないと思う。
著者がこの本で伝えたかったのは、アメリカの現状だけではないように思う。グローバリゼーションによって世界が変わっていく中、私たちはもっと正確な情報を知らなければいけない。例えば、戦争は国際政治の文脈だけでとらえるのではなく、貧困ビジネスの一部であるという見方を持つこと。例えば、アメリカの肥満問題はただ食文化が原因なのではなく、アメリカ社会を蝕む貧困が影響しているということ。民主主義の国において、私たちはよりよい社会を目指すために、溢れる情報の中から的確に、正確な情報を知り、考えることをやめず、行動に移していくことが、これからの未来を創っていくことに必要なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月3日
読了日 : 2017年6月3日
本棚登録日 : 2017年6月3日

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