東京の下層社会 (ちくま学芸文庫 キ 9-1)

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  • 筑摩書房 (2000年3月8日発売)
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明治から昭和初期にかけての東京の貧民・貧困を概観する。横山源之助「日本の下層社会」や森光子「光明に芽ぐむ日」など、当時の実態を克明に記した一級の資料を参照し、貧民たちがどのような環境に置かれていたのか、行政や資本家、社会運動家は彼らにどのような対応をしてきたのかを明らかにする。
そうして見えてくるのは、当時の貧困の、現代のそれとは比較にならないほどの過酷さ。極めて過酷な労働、飢え、病。衣食住のすべてが満たされないことが常態化した生活。
こうした人々が、東京には少なくない数存在していた。有名な三大貧民窟だけでそれぞれ数千人の貧民が住み、それ以外大小合わせて100以上もの貧民窟があった。
さらに、行政や社会の貧民・貧困に対する意識もまた、貧民を貧民のまま置くことを選んだ。彼らにとって貧民とは、救うべき対象ではなく怠惰により身を持ち崩した自業自得の人々でしかなかった。そうした無関心・無理解が貧民に対する放置を持続させた。
こういう貧困者への無関心・無理解が現代日本にも繋がっているかと思うと興味深い。生活保護叩きは記憶に新しいし、貧困者への行政援助に対する許容度が先進国では有意に低いことも有名な話。実感値でも統計値でも、貧困者に厳しいのが日本人の実状なんだろう。そういう心性は、100年前から変わらないということだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2014年12月6日
読了日 : 2014年12月6日
本棚登録日 : 2014年12月6日

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