間宮林蔵 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1987年1月8日発売)
3.97
  • (21)
  • (21)
  • (17)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 147
感想 : 21
5

林蔵が、「樺太が島であること」を発見したということは歴史の授業で、1行程度により簡単に紹介され、知っている事実ではありますが、その背後にあった大変な冒険談は極めてドラマティックな内容です。そして極寒の地での探検を続ける上で協力をもらうことが不可欠であったアイヌ、またキリヤーク人との心の交流など心温まる話です。彼らの命を恐れない協力と、林蔵の強い意志がないと実現できない事実譚です。アムール川を遡って清帝国の領域まで足を伸ばしたのも驚きです。樺太の北端の岬から全面に広がる海を見たときの感動、アムール川を下って河口からの大海へ流れ出す雄大な水の流れを見たときの感動はジーンとくるものがあります。恐らく林蔵の気持ちを見事に再現したものだと思います。後半は一転して名声を獲得した林蔵がシーボルト事件の摘発者として白い眼で見られたり、幕府隠密として長崎、薩摩、浜田藩などへ足を運んだりと蛇足のように思えるのですが、最終的にシーボルトが彼を樺太海峡発見者として評価して紹介したことが世界的に評価として確立したことを示すためには必要だったのでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史小説
感想投稿日 : 2013年8月16日
読了日 : 2008年5月27日
本棚登録日 : 2013年8月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする