西部は自らを知識人でありながらインテリヤクザと呼び、中学・札幌南高校のクラスメートであった海野治夫という自死を選ばざるをえなくなったヤクザとの心の交流を通して、2人の大きな人生の違いが紙一重の選択によったことを淡々と書いています。特に札幌南という名門高校で1,2番を争い、しかし「お前にはどうしても勝てなかったので馬鹿馬鹿しくなった」という海野の後年の言葉は辛い内容だと思います。中学の修学旅行に2人だけが参加せずに、ぶらぶらと過ごしていた仲で、友情と呼べるのかどうかは分かりませんが、海野が西部に心を許していたことは表現で理解でき、海野の悲しさが伝わってきました。そして海野の父が朝鮮人であり、そのことを秘して生きていくという海野の兄たちの生き方も悲しさを感じます。まるで海野へのレクイエムとでも言うべき作品ですが、西部自身の思想の変遷の背後にある複雑性を吐露している作品でもあるようです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2013年8月22日
- 読了日 : 2005年8月31日
- 本棚登録日 : 2013年8月22日
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