いまも、君を想う

著者 :
  • 新潮社 (2010年5月1日発売)
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本棚登録 : 121
感想 : 21
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元朝日新聞記者から映画などの評論家となり活躍しておられる著者の文章は淡々としている中で感動的な文章が多いのですが、この本も期待に違わず、2年前に亡くなった妻へ献げる鎮魂歌ともいうべき珠玉のエッセイ集です。学園紛争が華やかだった時代に警察に逮捕され朝日新聞を退職せざるを得なくなったときに婚約中であった妻の「私は朝日新聞と結婚するのではない」として、結婚を決断してくれたところから、明るく多くの人々に愛され、料理が得意、猫が好き、細身でツィギー・ブームの御陰でミニスカートが似合った、そして35年間の結婚生活を経て57歳の若さで癌により死亡。結婚生活のいろんな場面を思い出して綴った鎮魂歌は静かな感動を与えてくれます。藤沢周平、仲代達也、伊藤茂次(詩人)、谷川晃一(画家)ら先に妻を喪った人たちの言葉が出てきますが、いずれも感動的であり、そのように想うことになるだろうということはもの凄くリアルに感じます。藤沢周平の言葉。「そのとき私は自分の人生も一緒に終わったように感じた。死に至る一部始終を見とどける間には、人には語れないようなこともあった。そういう胸もつぶれるような光景と時を共有した人間に、この先どのようなのぞみも再生もあるとは思えなかったのである」(「半生の記」)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2013年8月18日
読了日 : 2010年8月16日
本棚登録日 : 2013年8月18日

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