波子は言う。
「結婚はみんな、一つ一つ非凡のようですわ。・・・・平凡な人が二人寄っても、結婚は非凡なものになりますのよ」
気怠く鬱々とした物語だった。
戦争が終わった平和な世界で、一つの家庭がキシキシと音を立てながら崩れてゆく。
波子も、娘の品子も、想う人がありながら踏み出せずにいる。無心に舞うことができない。
矢木は不気味だ。妻のことも娘のことも見下している。プライドだけが無駄に高い生活力のない男。
家族に毛嫌いされている沼田は、それほど嫌な人物だとは思えなかった。
「雪国」や「古都」よりも、現実的で生々しい。
生々しく、それでいて淡々としていて、心の奥底に沈殿していく。
余韻が長引きそうだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年1月2日
- 読了日 : 2015年1月2日
- 本棚登録日 : 2015年1月2日
みんなの感想をみる