おそらく明治期以降の歴史に最も精通しているだろうと思われる著名な「歴史家」5人による「座談会」ということで、大きな期待をもって本書を読んだが、ちょっとがっかり。
本書には「日清戦争・日露戦争」の戦術的な論議は多いが、背景の政略的考察や歴史的位置についてはほとんどなく、昭和の大戦争へつながった「大陸政策」への言及もほとんどない。
「日清・日露」という勝った戦争の自慢話のような論議には、その後の「大日本帝国の大破綻」につながる大陸政策や、近隣諸国との関係への辛辣な考察はかけらも見られない。
本書の座談会の論議は司馬遼太郎の「坂の上の雲」の「正しい日本と邪悪なロシア」の勧善懲悪のような単純な史観から一歩も出ていないように思えた。
日露戦争時のロシアの内情については、相当詳しい考察がすでに明らかになってきているのだが、日露戦争を「ロシアの膨張主義に対する日本の防衛戦争」と捉えるには相当無理があるのではないかと思う。
「勝った戦争より、負けた戦争から人々は多くの教訓を得ることができる」とはまさに真理だと思えた。
現代の著名な歴史家5人でさえも、勝った戦争への評価には、辛辣さは全くない。
この「日清・日露戦争」の勝利が「韓国併合」や「満州国建国」につながり、「昭和の大破綻」を迎えた日本の歴史を考えると、徹底検証すべきことは、「日清・日露戦争」の戦術的巧緻ではなく、政略の歴史的評価ではないかと思うと、本書は残念な本であるとしか言い様がないと思う。
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- 感想投稿日 : 2013年3月9日
- 読了日 : 2013年3月9日
- 本棚登録日 : 2013年3月9日
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