杉本鉞子が自分のことを書いているのだが、一つ一つのテーマについて書かれている、これは伝記というよりエッセイに近いもの。語れらないこともある。
特に父親や夫を亡くしたことは、悲しみが深すぎたのか、多く語られていない。
祖母や使用人たちの物語を聞いて育ち、さらに仏教の教えも学んでいた幼少期。嫁入りが決まってから上京し、東洋英和に入学して学ぶ英語教育。英語を学ぶにも物語を愛した。結婚、渡米。出産、夫を亡くし、再び帰国。数年後再び渡米。ずっと深窓の令嬢で、召使に傅かれ、お金の心配もしたこともなかったであろう杉本鉞子が、その蓄えもほそぼそとしてきた時に、新聞社に投稿していたのが一連のエッセイだった。
明治に生まれ、アメリカに暮らした杉本鉞子の、女性としての意識の移り変わりや戸惑い。または江戸時代から受け継がれ、変わらないものが、祖母、母、姉によって受け継がれていく。その対比が印象深い。
翻訳は英語から日本語へと、杉本鉞子自身が一緒に翻訳に協力したことが、訳者のあとがきに書かれている。その翻訳も大正時代なので、当時の空気を残した文体になっていることが、時代に合っていて独特の雰囲気を醸している。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説・人に歴史あり
- 感想投稿日 : 2023年2月23日
- 読了日 : 2023年2月23日
- 本棚登録日 : 2023年2月20日
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