女三人のシベリア鉄道

著者 :
  • 集英社 (2009年4月3日発売)
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本棚登録 : 121
感想 : 28

<与謝野晶子・宮本百合子・林芙美子の人生の旅を追体験!>


 与謝野晶子・宮本(中條)百合子・林芙美子。この三人の共通点は、シベリア鉄道で旅していたという点にあったのです。しかも、明治生まれの女流作家(ここはあえて「女性」ではなく「女流」と言いたい★)でありながら……!

 晶子は、パリにいる夫・鉄幹に会うために、7人の子供たちを置いて列車の旅へ。
 百合子は離婚後、友人のような恋人のような女性とともに、革命から十年後のロシアへ。
 芙美子は満州事変が起きた時代に、パリに住む画家に会うべく、夫を置いて一人旅へ。

 この3人の熱情大陸(←何かに似ている?)的な体験を、2000年代の作家が可能な限り追体験するという、壮大な紀行。読み甲斐が違います☆
 女三人がシベリア鉄道に乗り込んでいった事情、その選択、その行動、その迫力、その情熱、その愛のあり方、その途方のなさに、圧倒されるばかりでした★
 しかし、書籍や映画では、私は激しい女たちの生き方を見るのが好きかもしれません。痛いくらいがちょうどいいのです☆

 そして、自分の欲望に正直に燃えた女性たちの人生の旅を、著者の森まゆみさんは三人分まとめて追いかけていきます。女流文学者の評伝を数々手がけてきた彼女は、トランクいっぱいの資料とともに出発し、自分の人生と彼女たちの人生を行きつ戻りつするのです☆
 本の内容としては、女流作家三人のエピソードの割合が多いのですが、著者にも、平和の世にたどりついて無事にお子さんが育つまで、ここには書かれていない人生の旅があったことだろうな……と、苦労がしのばれます。

 私はさらに、その森さんを追いかけるような形でページをめくるという、旅の旅のまた旅を追っていくような構造(?)が発生。眩暈にも似た感覚に揺られる旅体験でした。
 終始、興味深く感じて熱中しましたが、長く人生経験を積んだ方が手にしたほうが、本書から感じ取るものは多いのかもしれないとも思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 続はっぴゃくじ
感想投稿日 : 2023年12月15日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年1月21日

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