モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

著者 :
  • 文藝春秋 (2005年7月10日発売)
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本棚登録 : 200
感想 : 41

 インテリおじさんの悪ふざけが過ぎる迷作★

 とある短大で国文学を教えている、非モテ助教授のクワコーは、出世街道から外れてぱっとしない毎日を送っていました。ところが、昭和の無名作家の遺稿と謎のメダルが持ちこまれたのを発端に、変化が。たいした心もこめずにそれらしき解説文を寄せたところ、遺稿集がベストセラーになったのです。クワコーも特需で「スタイリッシュな生活」を謳歌します♪ しかし、その裏で奇怪な事件が発生! ジャズシンガーで副業ライターのアキが探偵役に踊り出るのですが……?

『モーダルな事象』の「モーダル」とは、昭和文学につきものの「モダーン」(当時は最先端のスタイリッシュさを差す言葉だったが、平成以降の人間から見るとレトロ感覚)のことかと思って読み始めたのだけど、「モダンジャズ」の引っかけにもなっているのかな?
 また、アキの捜査活動がクローズするまでの間は、本体クワコーの動きが鈍くなる「マルチモーダル・インターフェイス」……等、私に読み取れるだけでも面白いヒソミのある作品でした。ほかにも何か言語遊戯の仕掛けが施されているかもしれません。凝った迷作です☆ 作者はきっとインテリ層だ! 放っておいてもいろんな人がほめそやしそうです。

 でも不満です。途中から現れたアキの元夫が探偵役のパートを奪うと、以後、アキは同伴役になり下がり、全く頭が動かなくなってしまいます。この進行や展開も、マルチモーダル・インターフェイスとかいうのでしょうか? しかし、年齢層高めの男性が女性に持つ偏見のようなものを感じてしまうのです……★
 それと、元・夫婦刑事(めおとでか)という呼び方を連発するのが、ジャズより演歌みたいだった……
 いくつもの言葉遊びがまぶされた本書は、「文学とおじさんギャグの違いはどこだろう」と考えさせてくれます★
 そんなところで、いまひとつ冴えない感想文を終わります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 続はっぴゃくじ
感想投稿日 : 2016年10月4日
読了日 : 2016年8月22日
本棚登録日 : 2016年10月4日

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