完全版 アンネの日記 (文春文庫) (文春文庫 フ 1-2)

  • 文藝春秋 (1994年4月1日発売)
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感想 : 44

世界で最も有名な日記帳★かわいそうなんて言わないでしっかり楽しみました!


 歴史的資料……? でも、一人の女の子の日記として読みたい★
 ナチス迫害の手を逃れた一家が隠れ家生活を始めてから、密告によって連行されるまでの2年余に綴られた<完全版>。これまで出版されていた短縮版とは異なり、アンネが普通の少女として感じた本音、周囲への怒りや不満などもはっきり記されているのが特徴だとか……

「だとか」と言うのは、私には較べようがないからで、実はずっと避けてきた本でした。アンネが世界の偉人的な扱いを受けている風潮を、嫌みったらしく感じていたからです。加えて「かわいそうな女の子」を同情しながら愛でる感覚も受けつけないな★
 ところが、先に読んだ『翻訳者の仕事部屋』で深町眞理子さんがアンネに言及した数篇から、「私はアンネを誤解してきたんじゃないか?」と考えるようになり……、流れのままに開いてみたのでした☆
https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4870313863
https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4480036938

 おそらく誤解ではなく、従来版『アンネの日記』は、ぶりっこ優等生然としたイメージでまとめてあるのではないかと思います。<完全版>から入ったのは運が良かった! しかも、私が違和感を覚えるのは、後世の日本における紹介のされ方であり、アンネ本人の責任ではないのです。

<完全版>は率直なモノの書き方が好ましく、友達が作ったホームページでも覗くような親近感を覚えました。既によく知られているところでしょうが、親友に宛てた手紙という形式に、独創的、作品性が光ります。読む側が時空を超えてアンネから語りかけられているような感覚。
 そして、従来版では多くを省かれていたらしい箇所、アンネの恋話が楽しい♡ 彼女の成長とともに変わっていく恋愛観、男子よりはるかに現実的な意見に「分かるー!」連発で共感したりして★
 彼女の境涯を生んだあの異常な一時代に関して、もちろん目をそむけるわけにはいきません。ただ、時には政治的な背景から離れて、優れた娯楽作品として捉えるのもアリだと信じます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 続はっぴゃくじ
感想投稿日 : 2023年6月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2009年3月18日

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