嫌われ松子の一生

著者 :
  • 幻冬舎 (2003年1月1日発売)
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<松たか子がマツコ・デラックスに変わるほどの大事件!>


 かつて聡明で美しかった松子は、なぜ「嫌われ松子」と呼ばれる存在になり果てたのか? 一人の女の奇妙な一生を追った巨編! 引きずりこまれるものを感じて読みふけりました。
 女性の、女性としての、女性らしさを生かした生き方だとは言えるでしょう。それでいて、自分からは明らかに縁遠い人生でもあります。

 あまりにも濃密な松子の生涯。
・昭和気質の父親から認められたい一心で、優等生になる。
・父の関心を病気の妹に奪われる(と松子本人は認識)。
・教師になったが、大騒動を巻き起こし離職。
・将来性のない文学青年に貢ぐ。
・文学青年が自殺。
・その親友と不倫。
・風俗嬢に転身。
・自分を働かせた男を殺害。
・助けてくれた相手と同棲。
・刑務所入り。
・元教え子(ヤクザ)と関係を結ぶ。
・刑務所入りした元教え子を待つ女となる。
・捨てられる。
・腐る……。

 やることがやたらと女っぽいです★ 行く先々で手近な男にすがって、状況に流されて。一見ありとあらゆる手段で生き抜いているようでありながらも、松子は主体的に生きられなかったことが読み取れます。
 なぜなら、愛に飢えていたから。自立した女は愛されない(特に松子の父が望みそうにないのが病根でしょう★)と知っている松子は、意外なほど男に従順だったのです。
 読んでいる最中に、ただ一度だけおかしくなった箇所があります。松子の美貌がまぶしすぎて男が逃げ出し、松子が「どうしてなのっ?」と打ちのめされるくだり★ ごめんね松子。必死すぎると人はおかしいものですね。

 愛されようとしたのに嫌われた松子。ですが、どうしたことか、松子の生と死が滑稽でも私は愛おしさをおぼえます☆ きっと、どんな自分でも存在することは許されている。ただし、この人生の答えは、一度でも死に物狂いになった経験のある人が手に入れてほしい。なぜか祈りに似た気持ちでそう思ったのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 続はっぴゃくじ
感想投稿日 : 2017年10月11日
読了日 : 2017年10月11日
本棚登録日 : 2017年10月11日

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