この本には直接的に出版の危機、取次の危機、製本の危機、印刷の危機をあおる文脈は出てこない。著者・佐々木さんがいかに気を使って書かれたか、だ。出版社から出されるコンテンツで“出版の危機”には言及出来ない。kindle,iPadなどのデバイス登場、プラットフォームの整備、ソーシャルメディアの台頭、そして出版社の360度の全方位プロデュース・マネジメント・プロモーション・2次3次利用が始まる、とギリギリの線でまとめきったのだろう。苦心惨憺の新書だ。音楽産業で展開されたことと、ほぼ同様の事が起きると佐々木さんは記すにとどまる。
実は自分の親は印刷業のリタイヤ組。顧問としておさまっている。この新書を渡したが理解不能の様子。75歳にはkindle,iPad,SNSの世界は、アンビエントとして理解不可能だ。理解できなきゃ現役印刷業の方々に渡してくれ、と頼んだ。デジタル化で消える産業だ。なのに実はこの本には、取次・製本・印刷の各業種についての将来像は、何も書かれていない。
既存産業の抵抗はまだ、大きそうだ。
読書状況:読み終わった
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メディア
- 感想投稿日 : 2010年5月5日
- 読了日 : 2010年5月5日
- 本棚登録日 : 2010年5月5日
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