昭和史の本を読んでみたくなり手に取った。本書は、昭和戦前から終戦までのターニングポイントとなった歴史的事件を、田中義一、浜口雄幸、広田弘毅、近衛文麿など昭和史の主人公の視点から描くユニークなものだ。著者は次のように述べる。「昭和史は逆説の連続である。希望はいつの間にか絶望へと変わる。夢と思えたものが悪夢に転ずる。平和を求めたはずが戦争になり、民主主義の先にファシズムが生まれる」(表紙より)。
本書を読むと、昭和史においては政治家の意図とは異なる結果の連続が、しばしば事態の悪化を招いていたことがよくわかる。楽観していたことが大ごとになったケースや、行動のタイミングが悪かったケースもあったようだ。時局に適切に対応できなかったのには、「元老」のような政治的に円熟した老獪な人物がこの時代にはほとんど存在しなかったことも関係していると思う。
そして、本書では常識を覆す形で次の見解が述べられる。
1.山東出兵は国際協調が目的だった
2.軍の暴走は協調外交と政党政治が抑えていた
3.松岡洋右は国際連盟脱退に反対していた
4.国民は〈昭和デモクラシー〉の発展に賭けた
5.戦争を支持したのは労働者、農民、女性だった
6.アメリカとの戦争は避けることができた
7.降伏は原爆投下やソ連参戦の前に決まっていた
叙述のスタイルや紙幅の都合上やむを得ないのかと思われるが、もう少し説明がほしいと思う部分がいくらかあった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年5月5日
- 読了日 : 2019年5月5日
- 本棚登録日 : 2019年5月5日
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