富士の裾野に建てられた名琅荘。屋敷内に抜け穴などが仕掛けてあることから、迷路荘と呼ばれていた。屋敷の主・篠崎に呼ばれた金田一耕助は殺人事件に巻き込まれる。20年前の惨劇に繋がる事件を解き明かせるか。
華族!過去の惨劇!密室!謎の洞窟!渦巻く情欲!いわくつき物件で巻き起こるいわくつきな血族の物語を書かせたら安定の面白さがある横溝正史。同じく洞窟を冒険する八つ墓村や、他の一族のドロドロに比べたらマイルドでオーソドックスなミステリでなんだか安心する。事件を追っていた老刑事・井川とのやり取りも小気味いい。
迷路じみた館と洞窟に、迷路のように入り組んだ人間模様。誰もが何かを隠し、己の正義、誇り、欲望の中を進んでいる。人間関係を解くというのは本当に一筋縄ではいかないものだなと思い知らされる。金田一が嫌悪する犯人の因果応報な末路も皮肉だった。
「人間の人格を形成するについて大事なことは、他からあたえられる恩恵だけではなく、他からうける信頼だ」
前半にある言葉なんだけど、読み終わってみると考えさせられる一言だと感じる。最後に見せた金田一の粋な取り計らいも好き。
あと、屋敷に抜け穴とか聞くと、今では綾辻行人先生の館シリーズを思い出すよね。迷路荘とかダリヤの間とか、館シリーズにも少し通じるキーワードもちらほらあって楽しかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年5月1日
- 読了日 : 2021年5月1日
- 本棚登録日 : 2021年5月1日
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