鴉の濡れ羽島で起こった事件から二週間。舞台は京都へ。いーちゃんが通う鹿鳴館大学での同級生との日常。そこから巻き起こる殺人事件と、京都を震撼させる連続殺人鬼・零崎との出会いが並行して描かれる戯言シリーズ第二作。
前作よりもミステリー成分は控えめ。それでも今回に相応しいトリックをぶつけてくれて、後半は鳥肌が立った。人類最強とのシニカルな対決と謎解きの二段構えは前回に引き続きキレがある。作中では明かされない謎(ヒントはある)もあって、それを考えつつ物語の結末に思いを馳せる余韻がいい。
今作はいーちゃんの価値観やスタンスを、零崎や同級生とのやり取りを通して掘り下げていく。零崎の無差別殺人と、人間関係が引き起こす殺人の対比。いーちゃんと零崎の殺人についての問答は興味深かった。非日常的な関係性なのに、日常的な香りもある会話劇の妙。他人は鏡。鏡写しのような二人だからこそ、それが余計に際立ってるよね。
同級生たちもさすが個性的。特に、巫女子ちゃんの「《中学二年生にしてバンド結成、ただしメンバー全員ベース》みたいなっ!」という例えツッコミシリーズが面白くて好き。
そして、とにかくあのラストの一言に痺れる。ある人へ向けたメッセージであり、いーちゃん自身も感じている言葉。中盤からの痛々しいほどの展開を振り払い、突き放すような一言は、この決着にとても似合っている。
友情や愛情。鏡に映したら束縛と依存。人とのつながりは大事だけど、自分の決断は見失ってはいけない。誰かのためじゃなく、自分のために。
「与えるのか、奪うのか」
自分で、決めろ。そういう物語だった。
- 感想投稿日 : 2020年5月24日
- 読了日 : 2020年5月24日
- 本棚登録日 : 2020年5月24日
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