攻殻機動隊 (1) KCデラックス

著者 :
  • 講談社 (1991年10月2日発売)
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感想 : 250
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西暦2029年。通信ネットワークによって膨大な情報が世界を駆け巡っている社会。しかし国家や民族、そして犯罪は依然として存在していた。より複雑化していく犯罪に対抗すべく結成された特殊部隊……公安9課に所属するその組織の名は、攻殻機動隊!

ぼくが攻殻に入門したのはSACから。スカパーが見られず、DVDを買っては何十回と繰り返し見ていた。SACでも圧倒的な情報量を誇るも、刑事ドラマ+文学的で入りやすかった。その後に原作へ挑戦。キャラクター性も物語も全く違う雰囲気で面白い。91年でこれを描いていたというのが凄まじい。

物語は難解。解説しろと言われてもできない(笑) ただ、噛めば噛むほど味が出る。電脳などの設定は画期的だし、取り上げられる社会問題も今読んでも新しく思える。社会情勢、利害関係を潜り抜けていった先には、人形使いなる存在が立ちはだかる。生命とは?という哲学性も飲み込んだ広大な物語。

最後に好きなセリフやコマ外の注釈を印象して終わります。

「『気持ち』は判るが邪魔だからしまっとけ」
「俺はロボットじゃねぇんだぜ!」

現実には「力は正義」である事が多いわけだが、これに反発して「力は正義にあらず」といった理想もある。しかし正義を通そうとするならそこに力が必要であり、理想は実現が難しい。更に正義と言っても「全体と個」や「キリスト教社会とイスラム教社会」等両方が互いに正義から生じて互いを悪とみなすケースも多く、もはや正義などという言葉は古めかしくさえ感じられる。「より多数の合意」が正義であるならば、情報というものはものすごく重要になる。

「偽善よ 消費優先の生活こそが貧困国に対する暴力だわ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2022年6月2日
読了日 : 2022年6月2日
本棚登録日 : 2022年6月2日

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