さよならソルシエ (2) (フラワーコミックスアルファ)

著者 :
  • 小学館 (2013年11月8日発売)
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本棚登録 : 1922
感想 : 212
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兄・フィンセントの才能を見出していた弟・テオドルス。やがて兄は画家に、弟は画商になった。そんなゴッホ兄弟の背負った宿命とその結末とは?!後世に伝わる狂気の画家の“物語”完結!

ぼくの知っているゴッホの生涯については、現代に登場した女性の知識と同じくらい。このマンガを読んで興味を持ち、ネット検索してみた程度で、その視点から感想を書いていきます。史実と違う点もよくわからないので、そこは悪しからず。

とは言うものの、その史実がすべて物語だった!という味付けが大胆すぎる。あるがままの美しさを描くフィンセントの作品を世に残すために、彼の人生を狂気の画家へと塗り替えたテオの発想たるや。フィンセントの才能を目覚めさせるためなら、自分の命も人生すら懸ける覚悟とは、それこそが狂気じゃなかろうか。

神から絵の才能を贈られたフィンセント。テオは嫉妬しつつも、誰よりも彼の絵に心酔し、それを完成させるために怒りの引き金を引いたという歪な兄弟愛が切ない。まさかここで耳のエピソードを入れてくるとは思わなかった。その後もフィンセントはテオのことを思い続け、神から贈られたギフトはテオだったと伝えるシーンもグッとくる。自分が持つ何をギフトと信じるかは自分次第なんだなと。自分を愛してくれた弟がいることだけは間違いない現実で、その弟がいたからこそ絵を描き続けられた。フィンセントにとっての才能の源泉はテオだった。それを開花させ、広げたのはまさに魔術師(ソルシエ)という名にふさわしい。

ただ、1巻でグッと心をつかまれてからの2巻で完結は、やはり駆け足に感じてしまう。もっと長編で読みたかったという欲が出るよね。ジェロームの小物感がすんごいのも、実際の歴史上ではどうだったのか気になるところ。このあたりの心理的葛藤なども長編として深掘りされていたら味わい深かったかな。あくまでテオ主役の物語としては面白く仕上がっていたように感じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2023年2月15日
読了日 : 2023年2月15日
本棚登録日 : 2023年2月15日

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