3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

著者 :
  • 白泉社 (2008年2月22日発売)
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東京の下町に暮らす17歳のプロ将棋棋士・桐山零の物語。
1話目の構成がすごい。香子の強烈な言葉たちから始まった開幕。そこから零が目覚め、将棋会館へ向かう時の、下町の音だけが響いてくる静けさとの対比がいい。
そして義父との対局後、初めてのセリフ「うそだ」の切れ味。ここもその後の川本家の描写とのメリハリがきいているよね。現実の冷たさも温かさもしっかり詰め込んだ1話だと思う。

川本家は人物だけじゃなく、料理やお盆の風景など画面の端まで丁寧に作り込まれていて、それが家族の温かさに真実味を与えているんだと感じる。
そして、それは将棋盤と最低限の物しかない零の部屋と対比にもなっている。事故で家族を失い、引き取られた家で生きるために将棋に打ち込むも、虐げられてきた彼。
居場所も何もかも失った零が、これから何を手に入れていくのか。そして、生きるためについた「将棋が好き」という嘘。プロ棋士として生きていく中で、彼がその気持ちとどう向き合っていくのかに期待したい。
ライバルの二海堂もとてもいいキャラだよね。子供将棋大会のエピソードも好き。零のことをガンガンかき回して欲しいね。

義理の父の「他人が説得しなけりゃ続かないようならダメなんだ 自分で自分を説得しながら進んで行ける人間でなければダメなんだ」は前作の『ハチミツとクローバー』でも感じた羽海野先生の哲学だなと。現実の厳しさの中で、あたたかく瞬く人間模様をまた見せてもらえたらいいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2019年10月31日
読了日 : 2019年10月31日
本棚登録日 : 2019年10月31日

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