「似たもの」「似て非なるもの」がテーマの14巻。
『歩鳥撃沈』の真田と歩鳥で小学校に侵入する青春小説感が好き。
「人間は思い出のかたまりなんだよ それを考えると怖くなってくんの」
「思い出ってでっかいんだよ!何年分もあるし色んな人の事覚えてるし そのでかいのがさ…例えば私が死んだらどうなるんだろう?フッと消えるのかな…時々 思い出が増えていく事がシンドイような気がしてくる 戻れない時間がどんどん増えてくのが怖い…」
この歩鳥の述懐が好きだ。真田の意見の「良い思い出なら増えても良いんじゃないの?」は、良い思い出だからこそ怖くなるんじゃないかと。歩鳥は真田の意見ではなくて、励まそうとしてくれたことに「そだね」と返したんだと感じた。
『夢現小説』での静の過去話もいい。北村の探偵脳と創作日記の発想が面白かった。ここが静と歩鳥の起点になってるんだね。「探偵失格」のくだりも「似たもの」なんだなって感じさせてくれる流れだった。
『お姉さんといっしょ』はエビちゃんをジャンケンで勝たせるために手を握ったところがよかった。照れ方が可愛い。最後はタケルがマッキーにわざと負けたってことなんだよね。
「野球の才能がある人がバットで書道やってるような人だ」
タケルが歩鳥を評したこの言葉も絶妙な表現。
『夢幻小説』も好きな話。周りの人たちや場所を愛してる歩鳥だからこそ、そこに自分が存在しないことが根源的な恐怖なんだなと。その世界からの戻り方もよかった。静が鍵になるってところが象徴的。
2巻の『それでも町は廻っている』は生命としての死がテーマだったけど、今回は存在としての死がテーマでかなり読み応えがあった。
- 感想投稿日 : 2019年11月5日
- 読了日 : 2019年11月5日
- 本棚登録日 : 2019年11月5日
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