初めて読んだ当時はイマジネーターの意味が理解できずにいたけど、今は腑に落ちる。心とは何か、その欠落は埋まるのか、とか深いテーマもあるけれど、前作に引き続いて恋愛が大きな役目を果たしていて、青春小説としても味わい深いのがいい。正樹と綺が相手のために能動的に行動していくところは、イマジネーターから言われて動かされていた仁と対比になっていてよかった。未来ばかり見ているから、自分だけが可能性だと思っているから、足元をすくわれるという話も胸に刺さる。
ちょうど最近「見かけはもっともらしい理屈の姿をして、人に考えさせないようにしてるシステムって社会にあるよね」ってことを考えていたので、タイムリーな話でもあった。自分では考えてるつもりで、与えられた正しいとされる答えに沿って生きてるだけ、というような。作中でブギーポップが触れてるけど、社会に適応していることは結局そういうことで、その不自由な精神の中で何を大切にしたいのか、何を望むのかってところが肝心なんだろうね。そして、その意志が人を繋いで、心を形作る。
あと、霧間誠一のこの言葉も好き。
「自分は正しいか、と自問するより、自分のどこが間違っているのかと考える方がずっと事実に近いはずだ、ほとんどの人間はいつでも正しいことはできていない」
社会では正しさばかり求められ、主張や行動する時は完璧でなければいけない、みたいな風潮がある。相手が間違いを起こせば、正論と机上の理屈で責めて終わりの正義中毒。でも、実は間違っていることを前提にした方が建設的になれるのではと感じられた言葉だった。
- 感想投稿日 : 2019年10月6日
- 読了日 : 2019年1月26日
- 本棚登録日 : 2021年1月6日
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