地上最後の刑事 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 24-1)

  • 早川書房 (2016年6月9日発売)
3.50
  • (2)
  • (14)
  • (15)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 184
感想 : 20

「みんなそう言うけど、それはーーそんな考えは傲慢だよ。そういうものなんだから」(略)「二つの天体は、別個に宇宙を動いているが、軌道が重なりあっている。そして今回、その二つは、おなじ時間におなじ場所にいあわせる。"おれたちの頭の上に落ちてくる"わけじゃない。そういうものなんだよ。わかった?」p.155

半年後に小惑星が地球に衝突し、人類は壊滅する。株式が暴落してマクドナルドは倒産し、保守点検の人員がおらず電話もネットもたまにしか繋がらない。多くの人が仕事をやめて「死ぬまでにやりたいことリスト」を消化しにゆき、首吊り自殺が珍しくなくなり、薬物が蔓延する。諦観と自暴自棄で崩壊しつつある社会。
ファストフード店のトイレで死んだ男も自殺に見えた。新人刑事パレスは些細な違和感から他殺を疑い、捜査を始める。

「世界の終わりまであと半年」という設定が絶妙。インフラが死につつあるので現代的な捜査が出来ず/結果がわかるまで時間がかかり、昔風の探偵小説の趣もある。些細な違和感を執拗に追いかける地道な捜査。

主人公は刑事になって数ヶ月の新人で、「自分の役割を全うする」ことに価値を見出している人間として描写され、世界の終わりを目前に地道な捜査活動をする人間として説得力がある。
念願かなって刑事に昇進したけど思っていたのと違うという失望があった。そんな中で遭遇した殺人事件。被害者の上司に事情聴取していて「まさか、だれかに殺されたと考えているんじゃないでしょうね」と聞かれた主人公が、やりがいのある仕事に「ついに出会えたのかも」と内心高揚するシーンが印象的。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ・小説
感想投稿日 : 2016年6月16日
読了日 : 2016年6月16日
本棚登録日 : 2016年6月13日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする