嘘くさい物語にまったく入り込めずにいた。不自然で人偽的な主人公のエピソード。名前の由来や、ありがちないじめ設定、家業が動物園という特殊すぎる環境に幼いのに宗教に3つも入信するなんて…。船が遭難して救命ボートに乗り込むのがシマウマ、ハイエナ、オランウータン、それにトラだったという展開になってもう「プーさんかよっ? 100エーカーの森かよっ!?」と、そのバカらしさに観るのを辞めようかと思った。その後もCGに頼りまくったありえない映像美に、矛盾した主人公の行動、細部の齟齬は数知れず(なぜバナナ拾わない? あの狭い船でトラはどこに隠れていた? 動物の死骸はなぜ急になくなる? 船縁を登れないトラをなぜ助けた? etc…)もう興は削がれて行くばかり。ところがっ、最後にして、してやられた。『ユージュアル・サスペクツ』並の大どんでん返し。ミステリーの技法で言えばUnreliableNarratorってヤツ。しかもそれがこの映画全体のテーマとなっていて、「人は自分の見たいようにしか現実を見ることはできない」という事実を突きつける。だから人は現実とは別の物語を求め、宗教に救いを見い出す。さすがジェームズ・キャメロンが絶賛しただけのことはある傑作。僕自身もこのテーマを解釈し咀嚼するにはしばらく時間がかかりそう。それにしても、もう少しミスリード部分も鑑賞に耐えうる仕上がりにもできたろうに。そこがもったいない。☆4.5
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- 感想投稿日 : 2014年9月6日
- 読了日 : 2014年9月6日
- 本棚登録日 : 2014年9月5日
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