世界から猫が消えたなら (小学館文庫 か 13-1)

著者 :
  • 小学館 (2014年9月18日発売)
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余命が残り僅かと言われた主人公が世界から一つずつものを無くして、1日ずつ命を与えてもらう物語。

世界には無駄なものが溢れているが、だからこそ一つのモノが無くなっても大きな問題は起きないだろう と思っていた。

世界から消していくもの


1. 携帯
2. 映画
3. 時間
4. 猫

これらを消すかわりに1日ずつ命を得ることができる

携帯を無くした世界

それは時間の開放。今までは携帯を使っていたようで、携帯に操られていた。

自分の世界と向き合う時間が増えることで、相手を想う時間も増えた。会えない時間があることで相手を想うことができる。

しかしその反面、すぐに気持ちを伝えたい時にも伝えられない。大切なあの人も携帯の中に登録されていて、人付き合いも携帯に任せっきりになっていたことに気づく。

映画が無くなった世界

それは自分を作るものが無くなった世界。主人公にとって映画は大切なモノ。好んで見ていたモノ。初恋の人との思い出もたくさん詰まっている。

映画がなくなっても実生活に変動はないが、自分が見て感じたもので人が成り立っている。

時間が無くなった世界

人が勝手に作ったルールが無くなった世界。とても自由に思えて不自由な世界。

人が勝手に作ったルールの中で人は自由を見つけ出す。

猫がいなくなった世界

主人公にとっては命よりも大切なものだった。幼少期からともに過ごし、亡くなった母との思い出もたくさんある猫。

命が無ければ全てが終わってしまう。しかし生きるか死ぬかよりも、どう生きるかが大切であると気づいた。猫がいない世界は命を保つよりも大切なものであった。

日々の当たり前にあるものが無くなっていくことで初めて気づく大切さ。

家族は”ある”ものではなく、”なる”ものである。

眼の前にあるモノに向き合い、なるものにしていくことで人生は豊かになるのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年8月23日
読了日 : 2023年2月2日
本棚登録日 : 2023年8月23日

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