5話収録の短編集。
「風を放つ」
短めの一話目。
ちょっとした悪戯心からしたことに、手痛いしっぺ返しを食らうんじゃないかとドキドキひやひやしたけれど、さらりと終了。ほっとするやら気が抜けるやら。
「迷走のオルネラ」
現実の狂気に満ちた事件から、虚実入り混じった物語へ。
救いを与えるふりをした救いのないお話。
お話自体に関係ないけれど、
並行読みしていた「経眼窩式」とかぶる設定があって混乱。
オルネラという文字になんとなく「ねこひきのオルオラネ」を思い出した。あちらはお爺さんだけど。
「夜行の冬」
怖くて幻想的な夜行の光景に、一行に加わりたいと誘惑される。
結末は好きではないけれど。
飲み込む闇より、闇に飲み込まれた心が怖い。
自分が同じ立場でも、同じことをするだろうなと思うのも怖い。
「鸚鵡幻想曲」
一番好きなお話。展開に驚いた。
意外な「偽装集合体」を「解放」したところで終わらず、さらに鸚鵡目線でお話が続く。
解放者への復讐と、おとぎ話で王子様が呪いを解かれるような結末。
50ページ強でこれだけ練りこんで、散漫にもならず過不足もない。すごい。
「ゴロンド」
竜の半生記ともいえるファンタジー色の濃い一篇。
彼らが最後に帰った場所はどこだろう。
広げた想像の翼が起こす風が彼らのもとにも届いたら、
いつかまた毛無し猿の末裔に会いに来てほしい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
た行の作家(国内)
- 感想投稿日 : 2014年7月1日
- 読了日 : 2014年6月30日
- 本棚登録日 : 2014年7月1日
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コメント 1件
九月猫さんのコメント
2014/07/02