醤油・味噌・酢はすごい - 三大発酵調味料と日本人 (中公新書 2408)

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  • 中央公論新社 (2016年11月16日発売)
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「醤油・味噌・酢はすごい」ことを書いているのではあるが、つくづく小泉武夫はすごいと思う。専門の学者とは言え、日本の三代発酵調味料たるこの3つについては、その歴史・製法・成分・効能・調理法まで凡そこのコンパクトな新書にギュウギュウに詰め込んで出し惜しみすることがない。

下手にネットサーフィンするよりも、この一書を読めば様々な調べ物は用を足すのではないか?とは言え流石に、発酵調味料が「腸に良い」という視点は、この学者には殆どなかった。医者でないので、 最新の病理学は得意ではないのだろう。あと現代風レシピもない。でも、「発酵調味料のおかげで、日本食はこんなにも美味い」ということは大いに主張している。日本全国、世界の発酵調味料は味わい尽くした御方ではある。

私の関心は腸活に関すること、古代の知識に関することなので、そこに限定して参考になった部分を以下にメモする。

〈醤油〉
・塩の土器製塩法(縄文後期〜)は茨城県霞ヶ浦に初現、以後松島、津軽、やがて弥生時代に児島、そして瀬戸内海全体へ、古墳時代に愛知や天草へ。
・醤油は6世紀初頭中国の豆醤(トウジャン)の上澄液の記録が有り。我が国へは仏教伝来(538)共に伝わったと言われているが、弥生時代に肉魚野菜を塩に漬け込んだ「比之保(ひしお)」があり、その保存液を捨てるはずがない(←私もそう思う)。「醤」に「ひしお」を当てたのは、似ているので、一緒にしてしまったのだろう。大豆も縄文時代からあることが、確かめられている。
・醤油1リットルに納豆5包、昆布、ニンニクを混ぜた「納豆醤油」を、小泉武夫は万能調味料として作ってきたという。粘り気のある調味料。気持ち悪いかもしれないが、私は試してみたい。

〈味噌〉
・養老律令(718)によると、調味料は「醢(肉の塩辛)、醤、鼓、未醤、酢、酒、塩」だったという。このうち、鼓は大徳寺納豆に近いもの、未醤が味噌である可能性が高くなった。味噌という漢字は「日本三代実録(901)」に初めて現れる。
・味噌の保健効果は多い。「大豆アレルギーが起きない」「血中のコレステロールを下げる不飽和脂肪酸が多い」「メラニン色素の合成を防ぐ遊離脂肪酸」「動脈硬化を防ぐレチシン」「大腸癌を防ぐ食物繊維」「ビフィズス菌を増やすオリゴ糖」「抗酸化と食品保存効果のビタミンE」「血圧上昇抑制放射線防御効果」「抗腫瘍性と抗変異原性」

〈酢〉
・酢の歴史は酒の歴史と同じ。ブドウ糖から酒が作られて、酒のエチルアルコールから酢酸菌が作用して酢酸ができる。
・奈良時代では既に酢を作るために最初から醸している。
・万葉集巻16に「醤酢に蒜つきかてて鯛願ふ吾にな見せそ水葱のあつもの」→「野蒜を刻んで加えた醤油と酢で鯛を食いたいと思っていたのに、水葵の煮物とは勘弁してくれよ」とある。←かなりのグルメだ!
・食酢の殺菌作用。o-157の様な薬剤に耐性を持つ細菌でも約150分で死滅。
・減塩効果並びに肉魚野菜からカルシウム、マグネシウム、カリウム、リンなどを溶出する力等々がある。
・熟鮓(なれずし)の知恵。保存性、魚臭の消滅、ビタミンの生成、整腸作用。
・酢の保健効果。コレステロール値の低下。糖尿病の予防効果。高血圧症予防効果。肥満の防止(脂肪面積の減少)。骨粗鬆症の予防。疲労の回復。
・食酢の有効摂取量は1日15-30ミリリットル。

←発酵食品博士の小泉武夫さん。現在77歳。これは4年前の書ではあるが、そろそろ身体をご自愛してもらって、無茶な食べ歩きはせずに、発酵食品で健康長寿ができると証明してもらいたいものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: さ行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2021年3月3日
読了日 : 2021年3月3日
本棚登録日 : 2021年3月3日

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