MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

  • NHK出版 (2012年10月23日発売)
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少し前、TVで3Dプリンターの展示会のニュースを見た。ビックリした。3Dプリンターとはコピー機である。二次元ではない。三次元なのだ。SFの世界がそこにあった。この本は、そういう世界の話かと思いきや、少し違った。話はもっと先に行く。プリンターは一部であって、そこから新しい次元の産業革命が始まっているというのだ。内容的には、私は製造業に疎くて付いていけなくなる場面も多かったが、幸い訳者後書きがうまい事要約してくれていた。少し長いが、紹介する。

(略)アンダーソンが指摘するように、ほんのひと昔前まで産業機械だったコンピュータやプリンターは「デスクトップ」とは対極にあるものだった。しかし、ひとたび「デスクトップ」と「コンピュータ」が結びついた時、人々の生活が大きく変わった。そしてそれがインターネットにつながったとき、革命が起きた。でも、それはまだ本当の革命ではないのです。本当の革命は、それが実体経済に影響を及ぼすとき、つまりものの作りのやり方が変わるときに起きるのです。とアンダーソンは言う。「デスクトップ」と「工作機械」が結びついた時、それまで大企業のものだった製造の手段を個人が持つようになり、ビットの世界で起きてきた革命がアトムの世界で起きるのです、と。スティーブ・ジョブズがパーソナルコンピュータを通して世界を変えたように、製造の手段を持つ無数の個人、つまり「メイカーズ」が世界を変えることができるのだという。しかも、それが社会と経済に及ぼす影響は、ビット世界の「フリー」や「ロングテール」よりも、はるかに大きく、深いものになる、と。
個人によるもの作りの革命を後押しするもう一つの大きな変化は、ブローバルなサプライチェーンが個人にも開かれてきたことだ。材料を調達し、部品を製造し、それらを組み立てるプロセスは、これまで大企業に独占されてきた。それが、ポノコやシェイプウェイズなどのウェブの製造委託サービスや、アリババなどのマッチングサイトを利用することで、プロ用の工作機械を所有しなくても、個人が大企業と同じ製造能力を手に入れることができる。お金がない?だったらキックスターで資金を集めればいい。それを売るには?ウェブサイトを立ち上げてオンラインで販売すればいい製造業を起業しようと思ったら、パソコンとインターネットがあればこと足りる。(略)

あとの「要約」は本書を読んでないとわからない言葉だらけなので省略します(これでもわからない人にはわからないと思います)。ひとつ大事なことは、メイカーズは特許権を主張せずに全て公開していることです。もちろん、その方がはるかに利益があるからそうしているのです。イマイチ仕組みがわからなかったのですが、事実が証明しているようです。

204pで、近く(アメリカ)と遠く(中国)で製造委託の利益が出る波を図で示していた。100個単位の試作品ならばアメリカ、1000個単位の製造委託ならば中国、柔軟な生産の必要性があり自社工場の一万個単位ならばアメリカ、費用削減の必要性があり10万個の製造委託ならば中国という風である。

これだけをみればまさにTPPの世界である。関税障壁が無い方が更に利益を産むだろう。しかし、一方でこれらを進めるのは大企業ではなくて、個人や中小業者だというのは、「新しい世界」のように感じる。マルクス経済の立場からの分析を切に望みたい。

なにか「途轍もない変化」が始まっている気がした。

2013年7月17日読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ま行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年8月11日
読了日 : 2013年8月11日
本棚登録日 : 2013年8月11日

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