映画「風立ちぬ」公開に合わせて、公開前と公開後に実現した長時間座談の内容を記録したもの。半藤一利さんの追悼特集を読んで、やはりちょっとは読んでおきたいと思い手に取った。宮崎駿72歳、半藤一利83歳、8年前の対談である。
お二人とも軍事オタクだから、軍艦や飛行機の話になれば花が咲く。そのあい間にお二人の半生もちょこちょこ出てきて面白い。そしてやはり「風立ちぬ」の中身に突っ込んだ話が半分くらい占めて、私はあまり評価していなかったこの作品をも一度見直したくなった。
以下面白かった部分の要旨を箇条書き。
・半藤一利「日本は、海岸線が長くて、資源が無くて、守れない、持てない国だ。それなのに、基本的には外交で守るしかない、とは誰も思わなかった。生命線とか愚かな思想が出てくる。現代は、長い海岸線に54基もの原発を無計画につくる。原発のひとつでも攻撃されたら、日本が滅ぶというのに。この国は武力による国防なんてどだい無理なんです。日本は脇役でいいんです。小国主義でいいんです。(66-69p)
・宮崎駿「アニメはこの50年でやり尽くした。あとは子供の人口が減って、どんどんジリ貧になる。大人の観客が増えて鈍化はしたけど、流れは止まらない。
・宮崎駿「新河岸川の5分アニメを企画したことがある。郷土資料館で使ってもらえないかと。舟運の仕組み・歴史が一眼でわかる。でもついつい作ろうとすると30分ぐらいになっちゃう。
・宮崎駿「堀越二郎のことを描かないと、かつてのこの国のおかしさは出てこない。(略)これを描くと子どもは土俵の外に置かれる、と言ったら誰かが「あとでわかる時が来るかもしれませんよ」と言って「そうかもしれない」と思ったのです。(略)あの時代を代表する二人は、自分にとって堀越二郎と堀辰雄だったんです。零戦だって、ぼくは描きたくないと思っていました。(略)終わりの草原はノモンハンのボロンバイル草原だよ、とスタッフに言っていた。(略)庵野は選びあぐねていた時に気が付いたんです。庵野秀明と出会ったのは、ぼくが43歳、彼が23歳、最初見た時は宇宙人がきたと思いましたよ。とうとうこういう人間が日本に現れたか、と。近頃ではいろいろなものを背負って歩いている。ギリギリのところで生きている。(略)やっぱり存在感が大事なんです。思い入れたっぷりに演技されるよりも、ボソッと喋ってくれた方がいいんです。
・宮崎駿「堀越二郎は、真面目に一生懸命に仕事をしている。世界がいろいろ動いてもあまり関心を持っていない日本人。つまり、(宮崎駿の)親父です。(略)みんな刹那的でした。ドキュメンタリーをやってくれる人はいっぱいいますから、それはお任せしておいて、ぼくはやっぱり親父が生きた昭和を描かないといけないと思いました。
・半藤「まだうまくいっていませんが、それでも東アジアが向かうべきはEUのような方向ですよ。
宮崎駿「ええ。それしかないですよね。
←このことに関しては、私も全く「それしか無い」と思う!!
- 感想投稿日 : 2021年4月18日
- 読了日 : 2021年4月18日
- 本棚登録日 : 2021年4月18日
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