シリーズ三作目となる本書。
国産のファンタジー小説は多数あれど読んで心地よく世界観に浸れるものは数えるほどしかない。
守り人シリーズは数少ないそのうちの一つと言える。
前の巻であ「闇の守り人」は、バルサの物語であるが、今回は大呪術師トロガイと薬草師のタンダの物語と言えるだろう。
普通の人には見えない異なる世界を見ることができる人々の物語。
バルサは、奴隷狩人から不思議な歌い手を助ける。
時を同じくして多くの人々が突然眠り続けたままの状態になる奇妙な事件が発生する。
タンダは眠り続ける姪のカヤを助ける為、危険を冒し「魂呼ばい」の儀式を行い、彼女の夢の世界に入り込む。
今回扱われる世界は夢と花である。
花が絡む幻想的な物語というと中国の幻想譚が思い出されるが、そういった何とも言えない怪しく幻想的な雰囲気が漂う世界が巧みに描写されている。
古来、夢の世界と言うのはあの世とこの世の境目に位置すると考えられている。
眠っている間人間の魂は肉体を離れ、この幻想的な世界を旅しその時の経験が夢であると昔の人は信じていた。
また一方、人は恋い焦がれるものや理想とするものを夢と呼びそれを求める。
あるものは、その思いが強くなりすぎ、自ら作り出した狂気という夢の世界で生きる。
今回の話は、そういった事がテーマとなっていたように思われる。
現在よりはるかに生活が過酷で、選択肢が少なかった時代の人々はどのような思いで生きていったのだろうかと考えさせられた。
物語で、心地良いが死につながる危険な夢の世界から抜け出すのに必要だったものは、親しい人たちからの愛、そして日常の些細な瞬間の美しさを愛おしむ心であるというのは素晴らしい解答であると思う。
それと武人であまり自分の感情を口にしないバルサがタンダをどれほど大切に思っているかがわかるお話でもあった。
ホントこの二人には幸せになっていただきたい。
- 感想投稿日 : 2017年12月27日
- 読了日 : 2017年12月24日
- 本棚登録日 : 2017年12月9日
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