文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

  • 草思社 (2005年12月21日発売)
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ジャレドさんの2冊目。この本ではかつて文明があった地域がなぜ崩壊してしまったのかについていくつかの事例をもとに考察を重ねていくものです。

まず、はじめは作者が住んでいたアメリカモンタナ州。もともとは自然が豊かで素晴らしい環境にあった。でも、鉱業会社が銅山を採掘する事業を進め、ずさんな運営により環境をこれでもかというほどに破壊した。水や土の中に有毒な物質がどんどん流れ込み、下流の水は飲むことができなくなった。また、豊かな森林は人々の生活に必要な木材や紙として次々に伐採されていき、大木は姿を消していった。その場に植えられた苗木は成長途上で山火事(雷などが原因)にあうと、すべて焼き尽くされてしまう。で、木々は育たず山は荒れたまま。

次はイースター島。いまやあの大きな石像のほかには何もない寂寥とした空間だが、かつては緑もあり、農業が行われ12もの首長がそれぞれの領地を治めていたという。でも、木材として木々を伐採していった結果、林は再生せず、最終的に木材は無くなった。木材がなくなると、海へ出るカヌーも作れず摂取するたんぱく源は島にいる鳥や海辺の貝。でもそれも取りつくして無くなった。最後は亡くなった人を食べたりする、人肉食へと堕ちていった。なぜイースター島の人々は木々をすべて切り倒してしまうというような暴挙をしてしまったのだろう。それには、イースター島の自然環境の影響がある。植物の成長率と実生の定着率が悪かったのだ。乾燥していて低温な荒れ地だからだ。それから、近くに人の住む島がなく孤立していたことも影響した。

あとはマヤ文明。文字や大きな遺跡もあり高度な文明を有していたマヤ文明だが、ヨーロッパ人がそこへ到着したとき、すでに誰も住んでおらず廃墟と化していた。文明が発展して人口が増える。その人口を支えるためだけの資源が無くなったと考えている。そこには強烈な干ばつなどの自然現象による影響もある。

他にもいくつかの事例が書かれている。いずれも自然環境の崩壊が文明の崩壊につながっている。しかも高度な文明の人たちは現代の人々に比較にならないほど自然についての知識があったにもかかわらず根絶やしにしてしまった。自然の変化は1日、1か月、1年。人の生きている40年~50年の間はそれほど変わったようには思えなかったのかもしれない。でも、100年、200年経つとき、その変化はリカバリーできないほど大きなものになっていて、手の施しようが無かったのかもしれない。これは、何も大昔の出来事だけではなく、現代も十分に起こりうる。というか、現代は人が生きている人生の中でどんどん自然が変化していることを目の当たりにしている。あたりまえのように食べ物を食べ、あたりまえのように資源を使いまくる今の過ごし方を続けていれば、これまた当たり前のように資源は無くなり、気づいた時にはどうにもならず滅亡するしかなくなっているのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライフ
感想投稿日 : 2021年2月12日
読了日 : 2021年1月30日
本棚登録日 : 2020年11月29日

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