国境 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2003年10月15日発売)
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本棚登録 : 609
感想 : 74
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「疫病神」コンビの第2作。金絡みの腐れ縁と嘯きつつ底流にある2人の友情と矜持の物語は今作でより爽快感が増す。なぜなら下手をうてば一生日本の土地を踏めなくなるリアル魔境金正日政権下の北朝鮮に、逃亡した詐欺師を追いかけ潜入する本当に命がけのシノギだからだ。平壌、豆満江と2回の北朝鮮の描写が圧巻で、これまでも大阪の街を、ルートをどこをどう通ってと緻密に描写してきた筆者独自のスタイルが踏襲されている。照明のない闇につつまれた北朝鮮の都市、郊外、中国との国境の村などなどの描写は、いったいどれだけの取材をしたのだろうかと思うくらいの圧巻のリアリティである。北朝鮮という独裁国家における国民への管理と格差の社会の現実に直面し、極道で欲の権化のような主人公桑原が、そのあまりの酷さに憤りを露わにする場面には、作者自身の憤りも滲んでいるのだろう。北朝鮮帰国後の、詐欺師、敵対する2組の暴力団、マル暴刑事、議員秘書などが、三つ巴、四つ巴になって争うクライマックスは一気呵成の面白さである。「疫病神シリーズ」として再編された文春文庫版は上下2巻だが、830ページをしても上下巻に割らないのはさすが講談社文庫である笑。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年2月12日
読了日 : 2023年2月12日
本棚登録日 : 2023年2月12日

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