夜明け前 第1部(上) (岩波文庫 緑 24-2)

著者 :
  • 岩波書店 (2003年7月17日発売)
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感想 : 25
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物語を期待して読むとがっかりする。教科書的な叙述が多いので、歴史に興味のない人には少々きつい作品だと思う。一時期藤村にはまっていた知人もこれだけは読み切れなかったと言っていた。
『破戒』は内容はともかく文章は読みやすかったので、こちらもすらすら読めると思っていたら甘かった。知らない言葉が次々出てきて。時代劇や時代小説読みなれている人なら大丈夫なのだろうか。註がないので苦労した。
主人公は己の信念と自身を柱とする家庭の間で揺れる青年半蔵。有能な父親の跡を継ぎ、コンプレックスに悩みつつ家業にいそしむが、渦中の京都へ飛び出していった学問仲間の友人たちを羨ましく思う。
電話もテレビもインターネットもない時代、世の中が大きく変わりつつあるのを感じるのは街道を通る人間たちのもたらす情報のみ。今でこそ北朝鮮がミサイル発射したというニュースも速報で知ることができるけれど、この時代黒船で揺れる国々の様子は一足も二足も遅れて山中の宿に伝わってくる。半蔵のもどかしさはいかほどだったろう。
私の住む町も昔の宿なのに、大名行列や街道についてほとんど知らなかった。近くに街道についての本を集めたブックカフェがあるので今度行ってみよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2017年5月29日
読了日 : 2017年5月18日
本棚登録日 : 2017年5月8日

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