実は「ミュゲ書房」という小説の中で、本好きの女子高生「桃ちゃん」が、書店主の「章」にすすめていたので、試しに読んでみたら、とても良かったです。
ヨシタケシンスケさんの、本と、それが好きな人への愛が、これでもかといっぱいに詰まった本書は、既に見返しの紙質の拘りから感じさせられて、世界中に点在する戦車なんか、本当に移動書店や図書館にすれば、どれだけの人の救いになるのかと、つい思ってしまう、そんな力が漲っている。
そして、本書の上手いところは、クスッと笑えるような面白いものを入れながらも、次第に、本だけにしかない大切なものへとシフトしていく構成であり、読んでいる側も最初は「アハハ」と笑っていたのが(カバー変更器の洋書風なんか、ただローマ字に変えただけ^_^;)、終盤には、その届けたいメッセージを、なんとか汲み取ろうと、自然と向き合っている私がそこにいて、改めて、私は本が好きなんだなということが、よく分かった。
また、そこには、子どもの精神的成長も温かく見守るような「ちょっと大きくなれる本」や、高齢化社会や孤独な人に寄り添う「文庫犬」、死後も、かつて読んだ本があることによって、その人自身が、いつまでも存在し続ける気持ちにさせられた、まるでブクログのような「お墓の中の本棚」など、ヨシタケさんの優しい人間性も感じさせられて、それは、このような雰囲気の書店があればいいのになとも思わせる、人の印象が本への印象も良くさせるような気付きを促せてくれた。
それから、何よりも素晴らしいのは、本が好きという、ただ一つの共通点だけで、老若男女、全ての人達が楽しめる点であり、やがてはそれが、図書館や書店で勤める人達、果てには、本に携わる全ての人達の本音も交えながら、その率直な気持ちを吐露した思いの丈が凝縮された結果、生まれたものは、人も本もお互いに切り離すことの出来ない、大切な存在だということであり、だからこそ、人は本を生涯に於いて必要とするのだし、本も人に読まれることを至上の歓びと感じる描写には、ケイト・バーンハイマーの「さみしかった本」を思い出させる切なさもあり、とても沁みるものがあった。
ただ、私が最も心を打たれたのは、
『お金で買えないハズのものがお金で買えるところ』
にあり、本って、こんなに奇跡的な素晴らしいものだったのだということを実感させてくれたことで、改めて、本に対する愛おしさがより増した気持ちとなったことに、感謝の気持ちを述べずにはいられなくなった。
ありがとう、ヨシタケさん!!
- 感想投稿日 : 2023年12月26日
- 読了日 : 2023年12月26日
- 本棚登録日 : 2023年12月26日
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