賄賂の罪を着せられ、腹を切らされた父。
その父を蔑み、憎むような態度をとる母と兄。
主人公の笙之介は、行き場をなくし、ある使命を持って江戸へ赴く。
浪人の身ではあるが、写本作りの仕事を請負いながら何とかその日暮らしをしている。
剣術はからきしダメだし、長屋の皆にも酷い言われようだけど、優しい、皆から愛される若者だ。
その脇を固める登場人物もステキ。
東谷様。
何か抱えている書物問屋の治兵衛。
差配人の富勘さんに長屋の面々。特に太一。
そして、賢くて気が強くてかわいらしい和田屋の和香。
頼りになる武部先生。
そして、笙之介の父の言葉がすごく心に残る。
嘘は釣り針の形をしている。
返しがついていて、まんまとはまっても、いざ抜こうとするともっと苦しむことになる。
だから、嘘をつくのなら一生つき通そうという覚悟を持ってしなさいよ。というようなもの。
皆、何か抱えながらも真っ直ぐに強く生きている。
だけど、何処かで捩れてしまう人もいる。
それが家族となると、より一層酷くこんがらかってしまうこともあって…。
家族だからこそ憎い。
家族だからこそ許せない。
それが悲しかった。
何故そこまで…と。
あまりにも悲しい真相だったけれど、ささらほうさらであったなぁと言える笙之介は強い人だとも思った。
本当はその胸の裡には色々あるだろうけれど。
和香さんとそれを癒していってほしいなと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宮部みゆき
- 感想投稿日 : 2013年7月6日
- 読了日 : 2013年7月6日
- 本棚登録日 : 2013年7月6日
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